≪野鳥観察情報≫
   鳥観察・探鳥の極意
 ======== by 吉成 才丈さん

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第93回   アホウドリの春
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今年の3月の彼岸頃、入る可能性のあった仕事がなくなり、数日間の休みができました。夏鳥には早く、すでに渡去した冬鳥も多いこの時期は、身近かな地域で探鳥地を探すのに苦労します。しかし今回は、迷わずに三宅島を選択しました。中途半端な時期だからこそ、夏鳥の渡りのタイミングを実感できるチャンスと考えたのです。また周囲を海に囲まれた島だからこそ、自分の目で確認できるチャンスも多いはず..と思い、いつも調査を手伝ってくれるスタッフ2名と共に島を訪ねる計画をたてました。

今回の三宅島のターゲットは、ツバメやアマツバメ、イイジマムシクイなどの夏鳥です。20数年前、4月の第1週に島を訪ねたときには、イイジマムシクイは島全体で囀っていました。本種の渡来時期は3月末〜4月初めといわれていたので、今回訪ねた3月21〜23日では確認できない可能性が高いことは分かっていましたが、逆に予想外の出来事に対する期待感は高まりました。そして現地では、アカコッコ館レンジャーのNさんと情報交換し合ったところ、ツバメは滞在中の23日、アマツバメも同じく22日が初認であることが分かりました。結果として、どちらの種も自分達で確認できたので、達成感も大きかったです。

この原稿を書くためにアカコッコ館のブログを見ていたら、3月の夏鳥や旅鳥の初認日が記載されていました。ヤツガシラ(3/11)、アオバト(3/18)、アオサギ(3/12)コチドリ(3/18)、ヒバリ(3/17)、ムクドリ(3/22)、ハクセキレイ(3/18)などと記されていましたが、三宅島はコマドリ(亜種タネコマドリ)やアオバズクなどが留鳥なのに、アオサギやムクドリ、ハクセキレイなどは、冬季には不在となるのですね。


さて、「船や識別が苦手で海鳥観察は未体験」というバーダーでも、アホウドリは憧れの鳥だというケースが多いようです。細く長い翼で悠然と海上を凪ぐその姿は、海鳥に興味のない人をも興奮させてしまいます。

ほんの少し前まで、アホウドリは幻の鳥でした。乱獲や火山の噴火等によって絶滅寸前にまで追いやられたアホウドリですから、フェリー航路などで偶然出逢えたら大喜びしたものです。ところが最近、嬉しいことに、アホウドリに出逢う機会が増えてきました。

三宅島訪問のもう一つの目的は、帰りの船の海鳥観察だったのですが、3/21早朝に三宅島到着後に海岸線に出たところ、沖合の海上にミズナギドリの小群を発見しました。よく見ると、ひときわ大きな個体が目に入りました。雨の中、車中からの観察では種は特定できませんでしたが、近くに東屋を見つけたため、屋根の下でスコープを取り出して確認したところ、アホウドリの若鳥であることが分かりました。しかし驚いたのはこのあとのことです。徐々に天候が回復して海上に明るさが戻ると、周辺には、成鳥を含むアホウドリが10羽以上いることがわかりました。オオミズナギドリと共に行き来する方向に沿って車で移動してみると、アホウドリはさらに多いことが分かりました。島の西側の阿古地区から伊豆岬まで移動しながら観察したところ、なんとアホウドリは合計50羽ほどが確認されたのです。近いところでは、アホウドリは肉眼でもわかるほどの距離でしたが、まずはその数の多さに驚かされました。

今回は三宅島の渡りを実感することが第1目標でしたが、期せずして、アホウドリの個体数増加をも体感する旅となりました。島からアホウドリが見られるなら、船が苦手な方でも大丈夫です。アホウドリを見たい方は、3月下旬〜4月上旬に三宅島を訪ねてみてはどうでしょうか。4月になればイイジマムシクイもやってきますし、小鳥たちの動きも活発になり、海上ではカンムリウミスズメを見るチャンスもあります。アカコッコ館のブログを辿ってみると春先の鳥の状況もわかるので、自分なりの目標をもって訪ねる時期を決めるのも楽しいはずです。

帰りの船は、アルパインツアーの団体さんと一緒でした。かつての船上探鳥はリーダーが大声を張り上げて鳥の出現を知らせていましたが、今回の船上は静かで、それでいて皆さんが効率的に右左舷を移動しながら観察していました。あとで気づきましたが、参加者の皆さんはイヤホンでガイドさんの案内を聞いていたのですね。参加者が分散し、エンジン音や震動で声も聞き取りにくい船上では、その効果が存分に発揮されていたようです。


  アホウドリ保護の取り組みや現状
    東邦大学メディアネットセンター
    http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/ahoudori/
  三宅島の鳥情報
    アカコッコ館ブログ「アカコッコからの手紙」
    http://miyakejima.seesaa.net/


ホビーズワールド
吉成 才丈