≪野鳥観察情報≫
   バードウォッチングのミカタ
 ======== by 松田 道生さん

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  第78回 貸し切りの場所
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私のもっとも古い鳥仲間の1人にF野さんがいます。50年前、私が高校生の頃、彼は中学生、明治神宮探鳥会で出会ったのが最初だと思います。それ以降、同年代の仲間と新浜や平林寺でバードウォッチングをしたり、2人で大岳山に登った思い出があります。

彼はその後、堅気の会社員となりバードウォッチングからは離れていましたが、ここ20年来、火が付いたようにバードウォッチングをしています。このところ定年間近でヒマになったのか、さらに拍車がかかっています。加えて、ここ10年は野鳥録音に凝っています。何しろ、50年を超える鳥歴のもと録音をするのですから、私が録音したことがないヤイロチョウはもちろんのこと「○○ムシクイが録れた」と悔しがらせること、たびたびです。

そんな話をネタに飲んだりメールをやりとりしています。先日、考えてみれば高校時代以降50年ぶりに、バードウォッチングをしました。F野さんが、まだヨタカの鳴き声を録音したことがないとのことで、栃木県北部のダム湖を案内したのです。

ここは、ヨタカからコノハズク、オオコノハズクといった夜の鳥のポイントです。夜の鳥が多いと言うことは、小鳥も多く朝はコーラスとなり、ときにクマタカの鳴き声が入っているというとっておきの場所です。今回は、ややシーズンが遅かったもののヨタカの鳴き合う声が録れました。

彼が感動したのは、誰もいないところで自由に録音できる楽しさです。野鳥録音の大敵は、人工音です。車の音から航空機の音、そして人の話声がいちばん困ります。ですから、探鳥会で録音はできませんし、人の集まる珍鳥ポイントではまず無理です。

F野さんがこぼしていたのは、録音中の人声がうるさくて困るということでした。鳥が鳴いていても鳥が出てこなければカメラマンたちはヒマですから、おしゃべりに興じています。これは、正直ストレスになります。私にも経験がありますが、にらみつけてどうなるものでもありません。野鳥録音がどういうものなのか知らないのですから、仕方ありません。また、気を使って小声で話される方もいますが、数10m離れた小鳥の声を録音するために、録音ボリュームは最大に設定していますので、それでも入るのです。それに気を使わせるのも申しわけありません。けっきょく、一人で行くか気心のしれた録音仲間と行くしかありません。そのため、人の集まるところは自然と避けるようになりました。

このように野鳥録音は、貸し切り状態でないと思うように録音できません。この貸し切りできる場所を見つけるのもコツといえばコツとなります。同じように、予約時間をずらすこともありです。たとえば、江戸川の河川敷にキガシラシトドが出現したときは、午前6時に現地に行きました。3月ですからまだ薄暗く、さすがにカメラマンは1人。おしゃべりの相手がいないので静かです。キガシラシトドも早朝ですから、よくさえずってくれました。ひとしきり仕事がすんだ頃にカメラマンが10人ほどになりましたが、予約時間が過ぎたと言うことで、引き上げました。

いずれにしても、貸し切りにできるフィールドを季節によって巡れるように持っていないと好きなように録音できないことになります。写真でも同じことだと思います。人の集まる中でなかなか開かない良い場所にイライラするのは、ストレスを溜めに行くようなものです。文句を言う前に自分でとっておきの場所を探すことでしょう。見つけるためには、知識と経験が必要ですが、それに磨きをかけることもコツです。人からもらう情報だけで野鳥を追いかけていたら、いつまでも身につかないコツだと思います。

50年のバードウォッチング経験を持つF野さんです。きっと、良いポイントを確保して、これからも野鳥録音を楽しんでくれることと思います。