≪野鳥観察情報≫
   バードウォッチングのミカタ
 ======== by 松田 道生さん

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  第87回 長い間、ご愛読ありがとうございました
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たしか1993年のことだったと思います。

私が日本野鳥の会を退職した年で、念願の北海道東部を巡る旅をしました。野付半島の先まで続く1本道を車で行くと、道ばたの草原にタンチョウがたたずんでいるのが見えました。車を止めて、そっと窓を開けて双眼鏡を取り出して観察です。ふと気が付くと、後ろに車が一台止まりました。こちらと同じレンタカーです。車から高齢者の男性がスタスタと降りて来て、三脚を広げ望遠レンズを設置してどんどんタンチョウに近づいて行きます。警戒したタンチョウは、飛び立ちはしなかったもののあっというまに遠くに行ってしまいました。もう、写真にはならないと判断したのか、くだんのカメラマンが車に戻ると走り去りました。時間にしたら何分もない、あっと言う間の出来事でした。文句を言う間もありません。たぶん私は、あまりの傍若無人の振る舞いに口をぽっかりと開けたままだったのでしょう。

印象的だったのは助手席に座っていた高齢の女性、たぶん奥さんでしょう。その間、タンチョウを見ることもなく、助手席に座ったままで雑誌を読んでいたことです。

こんなひどいカメラマンに会ったのは、はじめてでしたので良く覚えています。

当時は、日本野鳥の会の会員数が1万人程度の時代で、珍鳥が出現すると数10人のギャラリーが集まりはじめた頃です。ですから、バードウォッチャー、野鳥カメラマンとも今ほど多くなかった時代です。

その後、日本野鳥の会の会員は一時は4万人、2020年現在は35,000人となり、バードウォッチャー、野鳥カメラマンとも、会員数の何倍もの人数がいると推測されています。

それだけに、北海道であった高齢のカメラマン同様のマナー違反を何度も体験しています。珍鳥ポイントで集団から抜け出して近づく人は数知れず。餌付された珍鳥ポイントで、目的の鳥以外の鳥がきたら「シッ」と追い払う人など、不愉快な思いをしています。

また、伝え聞く悪行の数々には憤りを感じざるを得ません。

ひとつに野鳥を大きくきれいに撮りたい、見たいという願望が、野鳥へのプレッシャーになっていると思います。こうした願望をカバーできる機材が、デジスコでした。なにしろ、今まで双眼鏡の世界が写真になるのを望遠鏡の視野を写真にできるのですから画期的なシステムです。小さくて警戒心の強い鳥を捕らえるのには、最高の武器となりました。

さらに、この数年のデジタルカメラの発達により、1,000mm単位の望遠効果が得られ、動きの速い鳥を捕らえることができ飛んでいる鳥を止められるなど、カメラ機材の発達により野鳥写真の楽しみの幅が広まり深まったと思います。

それだけに、野鳥写真を楽しむ人口は爆発的に増えたと言えると思います。私の友人知人の多くも野鳥の写真を撮ることを楽しんでいます。多くの方が、たえずマナーを気にしながらの撮影には頭が下がります。

問題を起こす野鳥カメラマン、加えてバードウォッチャーがいるのは、人が多くなれば当然そのなかにはマナーのない人が出てくるという、確率の問題なのかもしれません。分母が大きくなれば、一定の数、こうした弊害が起きるのはどの世界でも同じことです。

また、高齢の野鳥カメラマンに注意をしたら逆ギレされたなど、高齢者の問題も野鳥の世界だけでない社会現象のひとつでしょう。

不思議なのは、これだけ情報化が進み野鳥の知識も情報も、そしてマナーを守るべきと言う話も広範囲に広がっていると思うのですが、まったくこうした情報に接することなく、野鳥の写真を撮り続けている人がいることです。自分の所業がどう思われ、どう言われているのか気にならないのでしょうか。

いずれにしても、マナー欠如の人は存在し続けることでしょう。これからも、野鳥たちを守るために不愉快な思いをしなくてはならないと覚悟しています。

今回、まことに残念なことに「デジスコ通信」は、終刊とのこと。まずは長い間のご愛読ありがとうございました。100回を超える連載にお付き合いいただき、重ねて感謝いたします。

情報発信することで、本メールマガジンの読者を通じて、少しでもこうした情報に接することの少ない方々に伝わればと思い書き続けてきました。それが無くなる一抹のさみしさを感じています。

どうぞ、これからも野鳥を知り体験することから、皆さんからも情報発信をしていただきたいと思います。大好きな野鳥たちを守るために、お願いいたします。そして、野鳥たちの素晴らしい世界を楽しんでいただければ幸いです。