≪野鳥観察情報≫
   トリ調べの方法
 ======== by 松田 道生さん


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  第6回 極めた本を読む
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『鳥類の生活』(浦本昌紀、1966年、紀伊國屋書店)という本があります。学生時代に、これを読めば鳥たちの習性について様々なことが書いてあり勉強になると思ってタイトルに引かれて読み始めました。ところが、四六版厚めの344ページの本の最初から最後までシジュウカラの話だけ、それも繁殖期についての生態について書かれているだけでした。浦本先生は、あとがきで「鳥類の生活全体を通覧してその多様性を生活の進化と適応という見地からまとめてみるつもり」だったのが、シジュウカラだけで枚数を超えてしまったと言っています。
しかし、シジュウカラの子育てから巣立ち、死亡率を含めて個体数の増減まで言及されている1冊を読むと鳥類の”生活の進化と適応”をかいま見ることができます。そうなのです。1種類の鳥でも一部の生活史でも極めた研究者が報告をていねいに書き連ね、まとめればそこから鳥たちの多様性に富んだ世界に広がっていくのです。そして、極めた研究者が書いた鳥の世界の本を読むと、野鳥への思い深まり知識が広がって行くことになります。

たとえば、『ロビンの生活』(D.ラック、浦本昌紀/安部直哉訳、1973年、思索社)は、野外で野鳥を観察することから詳細な生活史がわかることを証明した名著です。今では、当たり前に使われている言葉である”縄張り”の概念を一般的にした本ではないでしょうか。
『フィンチの嘴』(ジョナサン・ワイナー、樋口広芳/黒沢令子訳、1995年、早川書房)は、ガラパゴス諸島に生息するフィンチの生態と生態、そして嘴の形から進化という大きな命題に広がっていきます。
『カッコウの生態』(イアン・ワイリィ著、安部直哉訳、1983年、どうぶつ社)は、托卵という繁殖戦略を選んだカッコウの生き様がわかります。この他、『天上の鳥アマツバメ』(D.ラック、丸武志訳、1997年、平川出版社)『ワタリガラスの謎』(バーンド・ハインリッチ、渡辺政隆訳、1995年、どうぶつ社)『イヌワシの生態』(S・ゴードン、1973年、平凡社)などなど、上げればきりがありません。

以上は外国の研究者のものですが、日本人では佐野昌男さんのスズメについて一連の著書があります。最近のものでは『わたしのスズメ研究』(佐野昌男、2005年、さえら書房)があります。中村登流さんの森の鳥とエナガについての本も何冊もあります。そのなかで比較的新しいタイトルを上げると『エナガの群れ社会』(中村登流、1991年、信濃毎日新聞社)があります。この他、樋口広芳さんの野外鳥類学の一連の著書と訳書。唐沢孝一さんの都市鳥に関する多数の著書。杉田昭栄さんのカラス関連も勧めです。いずれも著者が実際にフィールドに出て観察し体験していることを元に書かれているのですから説得力が違います。また、取り上げられた鳥の種類の解説で終わりではなく、進化、あるいは人間社会との関わりへと広がっていく深淵なテーマへ展開している本たちです。

最近、読んだ中村浩志さんの『甦れ、ブッポウソウ』(中村浩志、2004年、山と渓谷社)がたいへん印象的な本でした。ブッポウソウが巣の中に瀬戸物やプルトップを集める習性の意味を解明するというのが大きなストーリーなのです。しかし、安易な思いこみや憶測で結論を出すのではなく、観察記録を元にていねいに検証を重ねて謎解きをしていくのです。このように書くと難しい論文の印象となってしまいますが、自然や鳥の情景描写も素晴らしく、本を読んだらブッポウソウを探しに旅に出たくなること請け合いです。

この他にも、1種類の野鳥やテーマについて極め、書かれた本は何冊もありますが、紹介はしきれませんのでこのくらいにしておきます。ところで、その鳥や特定のテーマだけで終わってしまって、広がりを感じさせない本も少なくありません。そのような本の多くはライターが資料を集めて、ただ書いただけのものである場合があります。わかりやすく素人受けするのですが、物足りない読後感が残ります。
また、もし専門家でありながら、そこから広がる世界をのぞき見ることができないとしたら著者の極め方がまだたりないことになります。あるいは、読み取ることができない読者の知識や見識がたりないことにあるのかもしれません。