≪野鳥観察情報≫
   トリ調べの方法
 ======== by 松田 道生さん


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  第7回 1種類について極める
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ここで提案ですが、たとえば1種類の野鳥にこだわってみたらいかがでしょうか。
あるいは、"渡り"とか"卵"などのキーワードでもけっこうです。鳥に関わること、ひとつのテーマを選んで、とことん調べて詳しくなってみませんか?
一番好きな鳥、興味のある野鳥を選ぶのが良いでしょう。できたら、あまり人が取り組んでいない種類のほうが面白いかもしれません。また、多くの人が興味を持っている鳥でも特定の地域について、あるいは特定の課題について取り組むのもよいでしょう。
たとえば、カワセミはファンが多い鳥ですが、生態についてはファンの多いわりには詳しい報告が少ない鳥です。同じようにフクロウに取り組んでグッズを集めたりしている人は多いのですが、では東京のフクロウについての現状を把握している人がいるでしょうか。

私は、鳥全体についてはもちろん、個別の鳥についてはいまだ浅学不明の輩にすぎません。仮に鳥について質問され、私が答えられないことがあったとします。それは、私が知らないことなのか、現在の学問では、まだ解明されていいないことなのかの判断を私ができないのです。このような私にとって、知らないことがまだまだたくさんあります。しかし、カラスについては多少の自信があります。

私は、東京のカラスにこだわって資料を収集し調査をしています。カラスを研究している人などいないと思われるかもしれませんが、実は全国にはけっこういるのです。少なくともカラスのメーリングリストには30人以上の研究者が登録しています。また、最新の日本鳥学会の2005年度大会では6件もの発表がありました。ところが、現在の東京の住宅地のハシブトガラスの繁殖の状況について調べている方は今のところいません。
過去には、1969年から5年間にわたり黒田長久先生が港区赤坂のご自宅のハシブトガラス一番について詳細な報告をしています。なんと、論文7編+αがあります。また、1980年代に福田道雄さんが上野公園のハシブトガラスの雛に木に登りケガをしながらカラーリングを付けて調べた報告があります。これは、より近年ですが、緑地のハシブトガラスのようすです。
私が調べている現在の駒込千石巣鴨地区と30年前の赤坂のハシブトガラスでは、縄張りの広さが何倍も違うのです。また、緑地と住宅地では、これまたハシブトガラスの巣作りの仕方が異なります。これだけカラスが問題になっていながら2000年代に入ってからの住宅地でどのように巣作りをしているかという報告は今のところ私の記録だけです。

増えたカラスをどうにかしなくてはならないと、カラス・シンポジウムを開催したのは1999年のことでした。この当時、私はどこかで誰かが東京のカラスのことを調べていて、その資料をもとに対策を講じれば、簡単にカラス問題は片づくと思っていました。シンポジウムでは、誰がどこでどのような研究や報告を行っているかを調べました。そして、主だった方に基調報告やパネラーとして出演していただいき、発表されている論文や報告書をリストアップし、学会で情報交換を行ってきました。こうして、シンポジウムからカラスの研究のネットワークができていきました。
その結果、得た大きな成果はカラスについては何がどこまでわかっているかと言うことです。カラスについてわかっていることと、わかっていないことがわかったのです。「なあんだ!」と思われるかもしれませんが、これはたいへん重要なことなのです。誰かはすでにやっていることをやってもムダですし、やっていることがわかったらそれを足場にして、さらに詳しく調べることもできます。
「マニアはわかっていることをすべて知っているが、専門家はわかっていないことは何かを知っている」という名言があります。わかっていないことがわかったことによって、そこから出発することができるのです。

知ったかぶりをして適当に答えるのは簡単です。しかし、自信をもって「わからない」と言うためには深い知識と見識の裏付けがなくては言えないことなのです。そういえるためにも、1種類、1テーマについてとことん取り組んでみませんか。