≪野鳥観察情報≫
   鳥観察・探鳥の極意
 ======== by 吉成 才丈さん

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  第10回 春の渡り
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〈まだまだ渡りの5月〉
野山は繁殖期を迎えた小鳥たちのさえずりで賑わってきました。しかしGWでは、まだまだすべての夏鳥が揃ったわけではなく、少なくとも5月一杯は春の渡りが観察されます。

関東周辺で例えれば、利根川流域のヨシ原ではオオヨシキリとコヨシキリの2種が同じ環境で繁殖している地域があります。オオヨシキリは4月に飛来して早々とさえずってますが、コヨシキリは半月以上遅れて5月になってから飛来します。越冬地は一部が重なるものの、オオヨシキリの方が南に幅広く分布するようですが、同じ環境で繁殖する似通った2種の渡来時期が異なるとは、非常に興味深いですね。

ちなみに、一番遅く通過していく小鳥は何でしょうか…? はっきりとは分かりませんが、東京周辺ではメボソムシクイの1亜種(同じ種であるものの、地域的に色彩が異なる個体群)であるコメボソムシクイが6月上旬に観察された記録がいくつもあり、種としてはメボソムシクイが一番遅いように思えます。日本の本州では亜高山帯の針葉樹林に亜種メボソムシクイが繁殖分布してますが、コメボソムシクイは通常は日本を通過して行きます。コメボソムシクイは北海道の山地では繁殖しているとの情報もあり、外国の同亜種との鳴き声の違いなどから、現在の分類自体を疑問視する考えもあります。私は野外で鳥の調査を行うことが多いのですが、福島県や宮城県での私自身の観察例は5例ほどあり、それらは5月26日〜6月11日の間でした。他の渡り途中の小鳥同様、意外と身近で観察されますので、どうぞ注意して探してみて下さい。鳴き声が特徴的で、メボソムシクイに似たリズムで「ジッジロ、ジッジロ..」などと濁った声で鳴きます。


◎ 離島探鳥のお供に ◎
・「サハリンの鳥」(日本野鳥の会札幌支部)\2,730-
「サハリンの鳥」というCDが昨年発売されました。前述のコメボソムシクイや日本では簡単に観察できないカラフトムシクイ、沖縄で越冬が確認されているムジセッカなどの声が収録されております。これら3種はサハリン内の4つの地域で録音された声が収録されており、複数の鳴き声のパターンを聞くことができます。またアカマシコのさえずりなども含まれておりますが、その他の種はほとんどが日本と共通種です。詳しくはHobby's World(03-3253-3077)へ問い合わせください。
収録種数:のべ88種(重複種含む) 録音時間:69分23秒。

〈春の渡り・秋の渡り〉
では、春の渡りと秋の渡りでは、どんな違いがあるのでしょうか?
まずは半年前に時計を戻し、秋の渡りを思いだしてみて下さい。草地や耕作地では、そこでは繁殖していなかったノビタキがよく観察されます。しかしほとんどの個体が地味なメスのような色彩をしており、図鑑に描かれている鮮やかなオス成鳥の夏羽のような個体にお目にかかることは滅多にないはずです。サンコウチョウのオスも長い尾は落として渡るそうで、渡り途中に観察されるオスは、うっかりするとメスと間違えてしまいそうです。このように、秋の渡り時には繁殖を終えて換羽した(または換羽途中の)個体が観察されることが多く、併せてその年に巣立った幼鳥も同時に観察されます。
一方、春の渡りはというと、すっかり夏羽(繁殖羽)に衣替えした綺麗な個体が多く観察されます。オスはやる気満々で、これから縄張りを持ち、メスを獲得しなければなりません。本来の繁殖地ではなく渡り途中であっても、待ちきれないのか近くにメスを見つけたのか、それとも予行演習なのか、美しいさえずりを聞かせてくれたりします。小鳥は寿命が短く、巣立った翌年には繁殖を開始することが多い(巣立ったその年に繁殖する種もいるそうです)ため、昨年巣立ったばかりの幼鳥もこの時期になると、一見すると成鳥と見分けが付かなくなる程美しく変身する種が多いようです。
そうです、春は秋と比較して美しい夏羽の個体が多く観察され、我々バーダーの気持ちをワクワクさせてくれるのです。
また春はオスが先に渡り、繁殖地で縄張りを確保してメスを迎えるとも言われております。ということは、少しでも早く繁殖地に到着した方がよりよい環境を確保することができ、「途中でのんびりしていられない」と思っている個体も多いかもしれません。メスにしてみても、よりよいオスとペアになるには、あまりのんびりとはしていられないかもしれません。こうしたことが影響しているのか、秋の渡り時に比べて、春は途中の滞在日数が少ないように感じます。

〈春の渡りは身近な緑地で…〉
当然のように、山へ行けば山の鳥が生息していますが、渡りの時期は身近な緑地や公園も侮れません。東京の都市公園でもオオルリやキビタキの観察例は多く、先日はコマドリのさえずりが聞かれたとの報告もありました。
野山は新緑に溢れ、鳥も着飾り、我々人間の心もワクワクするこの時期、山に川に干潟に離島に、どうぞ積極的にお出かけ下さい。6月になると葉もかなり繁り、小鳥もあまりさえずらなくなります。

Hobby's World
吉成 才丈