≪野鳥観察情報≫
   トリ調べの方法
 ======== by 松田 道生さん

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  第13回 バードウォッチャーの質
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私は、ずうっとバードウォッチャーはナチュラリストの亜種だと思っていました。バードウォッチャーは自然愛好家だと思っていたのです。だからバードウォッチャーが増えれば日本の自然が守られ、野鳥が増えると思って活動してきました。

1970年代初め、各地に自然を守る会ができて全国組織が発足するなど、自然保護という言葉が一般的になりました。この頃の活動にはいろいろな人たちが参加してきました。なかには、全共闘崩れもいれば、労働運動のかたわら自然保護にも取り組む人もいました。そして、多くの運動の代表や活動の中心人物は日本野鳥の会の会員が多かったのです。そして、数年と活動が長引き、人が去っていくと残っているのは、顔なじみとなった鳥仲間だったのです。あるいは、もとはどうあれ運動をきっかけにバードウォッチングを始めた人が残っていることに気がつきました。

ですから、私はバードウォッチングを普及させバードウォッチャーが増えれば、自然保護に結びつき、大好きな野鳥を守れると思い活動をして来ました。私の活動といっても、せいぜい入門書を書いたり、エッセイを発表する言った程度でありますが、一助になればと思って苦労をしたつもりです。

ところが、最近の日本のバードウォッチャーの行動や発言を見ていると、どうもそうではないらしいと思うようになりました。

たとえば、「蛇が嫌い、ワシタカを見たい」と堂々というバードウォッチャーは、珍しくありません。蛇ほど、ワシタカの生活を支えている生き物はないのです。イヌワシも蛇に依存しています。サシバの分布は蛇の分布と一致し、蛇が冬眠してしまうので、南へ渡るのだという説があるほどです。

では、「蚊に刺されるのは嫌だけと鳥を見たい」はいかがでしょうか。確かに蚊に刺されるのは不愉快です。しかし、蚊の多さと野鳥の多さは正比例しています。蚊に献血をしなくては、バードウォッチングは楽しめないのです。ある意味、間接給餌をしなくてはならないのです。

「蛾、大嫌い」も多いですね。私は、蛾食性の鳥類の減少を危惧しています。1970年頃までは夏の山に泊まれば、窓辺にはびっしりと蛾がやって来ました。今では、ヨコバイやガガンボの仲間が来る程度で、蛾はすっかりと減ってしまいました。おかげで、アカハラなどの大型ツグミ類が減り、蛾が夜行性ゆえ夜行性のフクロウ類、とくにアオバズクが都会ではいなくなり、コノハズクやオオコノハズクの声を聞くことがなくなりました。また、公園のカラスウリのオレンジ色の実も少なくなりました。カラスウリの仲間は、夜に咲いて蛾が受粉の手助けをするのです。

これらは、食物連鎖の一例にすぎません。生態学の多少の知識があれば、常識的なことです。野鳥だけでなく野鳥をとりまく自然を見れば、すぐに得られる知識でもあります。ところが、バードウォッチャーのなかには、こうした感性がない人が多くいます。

野鳥さえ見られればよい。あるいは、野鳥の写真が撮れればよいというバードウォッチャーが多すぎるのです。そして、一般常識からかけ離れた感覚は、自然を破壊してまでも野鳥を追いかけたり、野鳥の習性や生活を無視して己の欲望のままに野鳥を追いかけて世のひんしゅくを買っているのではないでしょうか。結果、自然を荒廃させ、野鳥を減らすことに荷担していないでしょうか。

日本野鳥の会などでは、会員数の減少が問題になっています。しかし、会員数やバードウォッチャーの数が増えれば良いのでしょうか。今、バードウォッチャーの質が問われる時代になったと思います。