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第15回 海鳥の魅力に迫る
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「猛禽の識別は難しい」「カモメはもっと難しい」「シギチは更に難しい」と敬遠する方も多いようですが、そのうちのかなり多くの方が、いずれその難しい鳥の魅力に取り憑かれることになるのです。ついこの間までは、目の前にいても見ようともしなかったのに、いつのまにやら図鑑とにらめっこ…、誰もが「もっと早くちゃんと見てれば」ということになる可能性がありますので、苦手な鳥の識別も楽しむつもりでチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
さて今回紹介するのは、カモメでもシギチでもなく、さらに見る機会が少ない海鳥についてです。
海鳥の魅力に取り憑かれると、鳥見病も末期症状となります。なんと言っても、見る場所はほとんどが船上ですから、海鳥ウォッチングの最初の関門は、バーダー本人が船を克服できるかどうかがポイントになります。もちろん、最初から船に強い人ばかりでなく、苦しい思いを繰り返しながらも船を克服した方も少なくありません。酔い止めの薬は効くようですが副作用で眠くなる場合が多く、せっかくデッキにいるものの、睡魔と必死に戦っている気の毒な方も見かけます。しかし、棚の下にいれば上から牡丹餅が落ちてくることもあるように、そこにいれさえずれば、他の観察者の声を頼り観察できることもあります。
海鳥は主に船上で観察しますが、日本の海上を航行する代表的な航路が幾つかります。なかでも北海道への航路や小笠原への航路はその代表格で、それぞれに異なる特徴的な鳥類相を実感できるでしょう。
〈北海道への航路〉
かつての北海道への航路といえば東京〜釧路間の航路が代表的で、とくに北海道の陸伝いに進むルートではたくさんの海鳥が観察されました。また東京〜苫小牧の航路も人気があったのですが、いずれも利用者の減少によって廃止となってしまいました。現在では、名古屋〜苫小牧、大洗〜苫小牧、八戸〜苫小牧の航路などが代表的です。
北海道航路では春にもっとも鳥が多く、春先ならウミスズメ類、海ガモ類などの冬鳥が、ゴールデンウィーク前後には、南半球で繁殖を終えて北上してきたハシボソミズナギドリやハイイロミズナギドリなどの大群に出会うことがあります。繁殖地での子育てを終えたアホウドリの親が観察されるのも、島を離れた5月中旬が多かったように記憶してます。夏の釧路港路ではエトピリカが船に向かって来るように近づき、船を1周して飛去するといった行動を何度か観察しました。秋にはたくさんのトウゾクカモメ類が観察され、晩秋には往復で1000羽を超えるコアホウドリも観察したことがあります。冬はもちろん凍るほど寒いですが、数百羽のエトロフウミスズメの群れが、まるで絨毯が動くように集団で飛翔する姿も忘れられません。ウミガラスやウトウもたくさん観察できるので、寒くても我慢して観察することになります。
〈小笠原への航路〉
北海道の航路と共に代表的な航路が小笠原航路です。北海道航路が陸地に沿って大陸棚を航行するのに対し、小笠原航路は太平洋の沖合を南へ進みます。したがって、鳥の種類や個体数は北海道航路にかないませんが、トロピカルな鳥に出会うこともあります。この航路を代表する海鳥はオオミズナギドリとオナガミズナギドリの2種で、冬季を除く季節には、東京を出港した初日には東京湾内からオオミズナギドリが観察され、繁殖地の御蔵島周辺で大きな群れに出会うことがよくあります。季節にもよりますが、日が長い季節では八丈島を越えたあたりで暗くなります。そして2日目になるとオオミズナギドリはほとんど姿を消し、代わりにオナガミズナギドリが優占種となります。初めての方は、区切りのない海上での見事なまでの棲み分けに、きっと驚かれることでしょう。また、季節によってはオーストンウミツバメやアナドリ、クロウミツバメ、シロハラミズナギドリ、カツオドリ、クロアジサシなどが現れ、時にはアカアシカツオドリ、アオツラカツオドリ、アカオネッタイチョウ、シラオネッタイチョウ、アホウドリ類も現れますので、油断は禁物です。
ここ数年は、小笠原の定期航路を利用した硫黄3島クルーズも行われており、島で繁殖しているアカオネッタイチョウやシラオネッタイチョウ、アカアシカツオドリ、ヒメクロアジサシなどが、比較的容易に観察できるようになりました。来年も実施される可能性が高いようですよ。
〈航海先に立たず…〉
ちょっとこじつけてしまいましたが、先ほど紹介したとおり、海鳥がたくさん見られる航路が減少してきております。「船は強くないし、海鳥はそのうちね…」とのんびりしていると、取り返しの付かないことになるかもしれませんよ。
ご存じの通り、小笠原への就航が決まっていた高速船・テクノライナーは原油高の影響もあって取りやめとなりましたが、船の売却先が決まるまでは油断できません。空港問題もなくなったと思うと再燃され、テクノライナーの再就航プランまでもが噂されはじめました。ことの真偽はまったくもって分かりませんが、仮に高速船が就航すると、高速船上で探鳥することは不可能になります。かろうじて残された大洗〜苫小牧航路でさえ、船の構造が変わると鳥の観察がしづらくなります。
どうぞチャンスがあれば、航路での鳥見にもチャレンジして下さい。道も道標もない海上を悠然と凪ぐアホウドリやミズナギドリの仲間、首を伸ばして水面低くを飛翔するアビの仲間、素早いはばたきで弾丸のように飛翔するウミスズメの仲間、春や秋に海上を通過するヒレアシシギの仲間など、航路の鳥見は見所満載です。もちろん鳥の少ない時もありますし、船に酔うこともあるでしょう。しかし怖々乗った方で、「もう船は勘弁してくれ」という方はあまりいませんよ。
〈船上での会話〉
最後に、北海道航路で観察していたときの緊迫した会話を紹介します。
バーダーA「トウゾク! トウゾクがユリちゃんを襲ってます」
バーダーB「どこどこ?」
バーダーA「3時から2時半くらい。今度はネコを追いかけてます」
バーダーB「本当だ、あっ後ろからオオトウゾクが接近!」
バーダーA「漁船のカモメの群れの中に大きいのがいます」
バーダーB「グンカン、グンカン。グンカンが漁船についてるぞ!」
バーダーA「グンカンがオオセグロにアタックしてます…」
会話の内容についての説明は要らないと思いますが、船上での探鳥の際には、周辺の一般人に誤解されないよう、くれぐれもご注意下さい。
そうそう、待望の「海鳥ハンドブック」が年内に発売されるらしいですよ。
Hobby's World
吉成 才丈
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