≪野鳥観察情報≫
   トリ調べの方法
 ======== by 松田 道生さん

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  第16回 適切な自然観とは
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いろいろな場で自然や野鳥についてコメントを求められた時、もっとも苦慮するのが「それが自然なのだ」という当たり前のことがなかなか理解されないことです。これは、多くの人々に自然観が欠如しているか、科学的な知識をもとに得た自然観も理解していないためだと思います。

たとえば、TVのワイド・ショーで動物の害性を取り上げる場合「異常発生した謎の○○」といったタイトルが付けられます。カラスのネタでは「東京で異常発生した恐怖のカラスが人を襲う」というタイトルやナレーションとなってしまいます。この流れのなかで「そもそもカラスが増えることが自然なのだ」と言ってもコメントそのものが採用されませんし、番組の流れを変えることはできません。

そもそも異常発生とは、生物界ではありえません。個体数が増えると言うことは、食べ物と繁殖条件が整っていることに他ならず、異常ではないのです。食料と繁殖する場所があって、増えない方が異常。その原因が複雑であったり遠く離れたところにあって因果関係を解明することが難しいということは、あるでしょう。しかし、増加の原因は、自然の仕組みを理解している人が見れば判断や推測できることだと思います。

あたかも”異常”であるということから、不思議、謎というようなフレーズの展開となってしまい、解決策はそもそも増えた大元の原因である大規模な自然環境の破壊や食べ物や繁殖条件に目が向けられず、目先の対策の捕獲といった安易な解決策へと展開していってしまうのではないでしょうか。

これに誤った動物観が加わると、もっと解きほぐすのに苦労をします。たとえば、カルガモはよく都内の公園で繁殖して雛を孵します。時には、ビルの緑地やデパートの屋上でも繁殖してしまうこともあります。大手町の”カルガモ親子”は、アゴヒゲアザラシのタマちゃんのように野生動物をアイドル視をするようになった原点であることを思い出してください。そのアイドルの雛が、カラスに襲われたらそれこそ一騒動。

カルガモは、10-12羽の雛を孵します。カラスの平均2羽に比べると極めて多い数です。カルガモは、天敵にやられることを見越してたくさんの雛を孵しているのです。親鳥2羽と雛12羽、合計14羽の内、翌年も2羽残っていればカルガモの数は変わらないことになります。それで良いのです。ある意味12羽は、死ぬべき運命にあります。このように、一番のカルガモの生存率を語ることは適切ではありませんが、地域全体の個体群に置き換えて同様に考えていただければと思います。

ですので、そのカルガモの雛が天敵であるカラスにやられることは自然なのです。雛を捕られてしまうような親鳥は不注意であるし、不注意な親は遺伝子を残せないことになります。あるいは、天敵のいるようなところに巣を作った親鳥が間違っていたのであって、安全な環境を選ぶことのできない親鳥は遺伝子を残せないことにもなります。これが自然なのです。

また、カラスが人の出すごみのために増えて、カルガモの雛を補食することが多くなり、カルガモが減ってしまうというパターンがあるでしょう。それでも、都市という自然のシステムの中での当然の帰結であり、これも自然なのです。

実際は、生き物同士の関係はもっと複雑で他の要素も絡み合っているので、因果関係を解明するのは難しいものがあります。さらに、長期にわたって増減を把握してから語らなくてはならないことでもあります。しかし、ダイナミックに自然の歯車が回っていくことには変わりはないし、カルガモもカラスもその歯車にすぎません。ですから、生態系のなかでは上下関係はありません。何が下等で高等かという価値観も意味がありません。皆、平等なのです。そして、私たちヒトも同じ歯車のひとつだという理解が、適切な自然観のひとつと言えます。