≪野鳥観察情報≫
   鳥観察・探鳥の極意
 ======== by 吉成 才丈さん

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  第16回 観察記録を未来の財産にする方法
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〈観察記録は未来の財産〉
「観察記録は未来の財産」と聞いて、ピンとくる方は少ないはずです。誰もが"趣味"で始めたバードウォッチングですが、観察記録を蓄積して整理すると、未来の貴重な財産になるのです。決して大げさではありません、コツコツと積み上げた記録は何かを解析する際の基礎資料となり、その裏付けがあるからこそ推測ではない科学的な解析ができるのです。つまり、「この公園の池にはカワセミは昔は居なかったけど、最近はよく見かけるようになった」という曖昧な記述も、「この公園の池には、1990年まではカワセミは居なかったが、1990年代になると秋から春には観察される頻度が徐々に高くなり、2000年以降には繁殖も確認されて一年中見られるようになった」などと具体的に言えるようになります。こうした解析が全国各地で行われれば、その傾向が全国的なものなのか、または地域的、あるいはその限定された公園でのみのことなのかが分かるようになります。もしその公園でのみの事例であったなら、そこにはカワセミが増えた何らかの要因があり、それが分かれば他の地域にも活かせる資料になるかもしれません。
カワセミを例にしましたが、いつも普通に観察される種であっても同様です。環境の変化によっては普通種であっても個体数の増減がみられ、かつては山の鳥であったキジバトが都会に進出してきたり、コゲラが都心に戻ってきたりした例など、ご存じの事例も多くあることでしょう。またつい最近では北海道でスズメの大量死が報じられましたが、その前後には北海道各地で「スズメが消えた」との報告が多数寄せられました。
珍しい種の観察記録は、それ自体が大事な資料となります。最近はデジスコの普及により容易に望遠撮影ができるようになりましたが、写真の価値は美しさだけではなく、観察記録を裏付ける大事な証拠にもなるのです。

〈まずは記録を書き留めること〉
すでに観察記録を書き留めている方は多いでしょうが、これから記録を取り始めようとする方の為に、記録の取り方について触れてみましょう。まずは無理のないよう、また楽しいはずの鳥見が苦痛に感じない程度に気楽に考えて下さい。

◎ フィールドノート
探鳥会では支給されたチェックリストなどに書き込むことがあるかもしれませんが、できれば専用のフィールドノートを作りましょう。ノート自体は手帳や大学ノートなど、どんなものでも構いませんが、フィールドでの使い勝手を考えると、ポケットに入るサイズのものが便利です。鳥合わせ(探鳥会などで、複数の観察者が見た鳥のチェックを行うこと)時だけでなく、移動中には電車やバスのダイヤ・運賃などをメモすることが結構ありますので、フィールドノートの大きさや形状は、マメにポケットに出し入れすることを前提に考えるとよいでしょう。

◎ 記録の内容
ますは期日、時間、天候、同行者などを書き留めます。また忘れないうちに、現地までの交通情報(ルートやダイヤ、運賃、バス停名など)も記録しておきましょう。仲間が増えると探鳥地情報をやりとりすることも多くなります。
つぎに確認した鳥ですが、分類順に種名を記入します。"分類"が分からない方は、『鳥630図鑑』(鳥類保護連盟)や『フィールドガイド 日本の野鳥』(日本野鳥の会)などの図鑑を見てください。取り扱われている野鳥は50音順ではなく、分類順に並んでいるはずです。野鳥を分類する基準は"目(もく)"、"科"、"属"、"種"の順となっており、日本鳥学会の最新の目録『日本鳥類目録改訂第6版』では、18目74科230属542種の野鳥が記されてます。私たちが通常用いるのは"種"レベルの名称である種名ですが、図鑑によっては種の中に亜種の記述があるものもあり、同じ種でありながら、地域によって大きさや模様に違いがある種があることが分かります。
アビの仲間に始まりカラスの仲間で終わるこの分類順を意識すると鳥のグループ分けができるようになり、鳥見が上達する上で有効な手段といえます。アマツバメとツバメ、ウズラとミフウズラなどが違うグループにいることに気付いたり、新たな発見も多くあることでしょう。最初は何が何だか分からないでしょうが、難しく考えずに、図鑑の順番に種名を記入して下さい。
つぎに余裕があれば、個体数も記入します。気に入ったマイフィールドができると何度も通うことになります。種名の記録では居たか居ないかの比較はできますが、個体数を記録しておけば数の推移も比較することができます。たくさん居る種は大まかでも構いません。カウントした結果が約550羽の場合には"550±"、少なくとも550羽といった場合には"550+"などと記録すると素早く記入できます。
最後に、周辺環境などについて気付いた点があれば記入しておきましょう。「前回はあった林が消滅した」、「昨年はあった下草が綺麗に刈られてしまった」、「雨の直後で水量が多く、中州が水没している」「水際部がコンクリート護岸されてしまった」などなど、鳥の生息に影響のありそうな変化は見逃せません。

〈情報の公開・報告〉
最近は個人でホームページをもっている方も多く、探鳥記を楽しく公開しているサイトもよく見かけます。また書き込みができるサイトもありますので、こうした場を利用して見ず知らずのバーダーと情報交換を行うことも楽しいですね。
ただしホームページの内容はいつ更新されるか分かりませんので、観察記録をより有効に活かすには、然るべき所に報告する必要があります。日本野鳥の会の支部など、地域レベルで活動している団体の機関誌に投稿するのが一番簡単な方法ですので、インターネットなどで調べてみましょう。私も関わっている日本野鳥の会東京支部では支部報で鳥情報を募集しており、寄せられた情報は目録作りにも活かされます。同様に、情報を募集して集積している支部も多いようです。
また様式やルールがあるので慣れないと難しいかもしれませんが、日本鳥学会や山階鳥類研究所、日本野鳥の会の研究報などに投稿すると、バーダーや研究者の目に留まる機会が飛躍的に増えます。


いずれにしても、せっかくの楽しい鳥見の負担にならない程度に、まずは記録を書き留めることから始めましょう。興味深い発見や珍しい種の観察などがありましたら、どうぞお気軽に相談下さい。また日々の観察記録を書き留めるバーダーは多いですが、その記録の多くは個人のフィールドノートに眠ったまま…というケースがほとんどではないかと思います。「パソコンもやってるし、どうにかして整理できないものか」という相談を受けることも珍しくありません。データの入力方法についても、別の機会に紹介させて頂こうと思います。


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吉成 才丈