≪野鳥観察情報≫
   鳥観察・探鳥の極意
 ======== by 吉成 才丈さん

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  第20回 外来種と人間の責任
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〈外来種は招かざるお客様?〉
「図鑑に出てない鳥を見たのですが、一体何という鳥でしょうか?」と聞かれることがよくあります。「もしや日本初記録.. !?」と期待に胸をときめかせるかもしれません。もちろん、いろいろなケースがありますが、それが"関東周辺"で"小鳥"であった場合には、ガビチョウやソウシチョウなどである場合が多いようです。
"ガビチョウやソウシチョウって何?"と思われる方も多いでしょうが、元々は日本の鳥ではないので、図鑑に載ってなくても仕方ありません。このように、人為的に日本に持ち込まれた種は"外来生物"または"外来種"などと呼ばれ、日本に元から生息していた"在来生物"または"在来種"(野鳥)などと区別されます。ガビチョウもソウシチョウも、今や日本で繁殖している野の鳥ですから野鳥と言いたいところですが、残念ながら外来生物は外来生物として扱われます。
こんな差別ってあり? もしかして、外来生物は歓迎されない種なのでしょうか…?
そうです。不公平のように感じるかも知れませんが、外来生物は野外では歓迎されない種なのです。

〈生態系への影響〉
どんな土地や地域であっても、長い歴史の中で独自の生態系を築き上げてきました。もちろん、その過程においては色々な"変化"を繰り返してますし、今後も変化していくことでしょう。しかし外来生物は、その種の存在自体によって本来の生態系や人間生活に大きな影響を与える恐れがあり、とくにそうした危険性が高い生物は"侵略的外来生物"と呼ばれています。
もっとも知られている外来生物の1つに、魚類のブラックバスが挙げられます。この獰猛な種のお陰で補食される在来生物は影響を受け、その水域の種構成や生態系に影響を及ぼしていることは広く知られています。またその影響は魚類間だけでなく、人間生活(漁業)や小魚をエサとするカイツブリなどの鳥類にも波及しています。
少し前になりますが、公園の池などでカミツキガメやワニガメなどの危険な動物が発見され、繁殖可能性までもが示唆されたニュースも忘れることができません。私自身も、子供の頃には池で魚やザリガニを捕ったりしましたが、今や安心して子供を遊ばせることができなくなってしまったのでしょうか?
また沖縄や奄美大島などではマングースが野生化し、沖縄本島では、ヤンバルクイナが種の存続をも脅かされる大きな打撃を受けています。ヤンバルクイナといえば、鳥学の歴史の中で見ても、発見されたのはつい最近だったはず…。世界的にみても沖縄本島にしか生息していないのですから、我々日本人の責任として、何が何でも絶滅させるわけにはいきません。

〈身近な外来鳥類〉
では、ガビチョウなどの外来鳥類は、日本の野鳥や生態系にどのような影響を与えることが予想されるのでしょうか?ガビチョウはツグミくらいの大きさで、主にヤブや樹林の林床付近で生活しますから、ウグイスと同じような生息環境をイメージすれば分かりやすいでしょう。つまり、ガビチョウが増えればウグイスなどと競合することが予想され、ガビチョウが生息する地域では、ウグイスなどの個体数が減少することが危惧されます。またガビチョウと共に外来鳥類の代表的存在であるソウシチョウやカオジロガビチョウ、カオグロガビチョウはいずれもチメドリ科に属する種で、やはりガビチョウと同様の環境に生息します。

〈外来生物法〉
侵略的と称される恐ろしい種ばかりでなく、なかには可愛い種も多く含まれる外来生物ですが、やはり在来生物の影響を考慮しなくてはなりません。そこで登場したのが、平成17年6月に施行された「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」です。この法律の目的は、「"特定外来生物"による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資すること」とされ、そのために、問題を引き起こす海外起源の外来生物を"特定外来生物"と指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いを規制し、特定外来生物の防除等を行うこと」とされています。
つまり、"特定外来生物"に指定された生物は飼うこと、輸入すること、野外へ放つこと、販売することなどができなくなったのです。では一番気になる鳥類は、どんな種が"特定外来生物"に指定されているのかというと、前述のガビチョウ及びカオジロガビチョウ、カオグロガビチョウ、ソウシチョウの4種となります。
また同法では、特定外来生物とよく似ている種は"種類名証明書の添付が必要な生物"というカテゴリーに指定されており、輸入の際に輸出国政府機関などによる種名表示が義務づけられます。鳥類の場合には、チメドリ科の全種がこれに当たります。
さらに同法では、特定外来生物とは別に、生態系や人命、農林水産業へ被害を及ぼす疑いがあるか実態がよく分かっていない外来生物は"未判定外来生物"に指定され、輸入する場合は事前に届け出る必要があります。鳥類の場合には、特定外来生物に指定された4種を除くチメドリ科全種が該当します。
こうした法令に違反した場合には、個人の場合、最高で3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が課せられることになりますので、軽々しく考えるわけにはいきませんね。


〈本当に悪いのは〉
モラルという言葉は、今や死語と化してしまったのでしょうか? 鎖を付けずにイヌを散歩させる(自称)愛犬家、ゴルフ禁止の河川敷でクラブを振る地域住民、ベンツに乗るほど裕福なのに子供の給食費を払わない親など…、当たり前のことも法律で規制する時代になってしまったようです。
外来生物についても同様に、人間の都合で輸入され、人間の都合で飼われ、人間の都合で野に放たれる外来生物に罪があるわけではありません。悪いのは無責任に飼い、無責任に野に放つ人間なのです。もちろん、実質的に野鳥は飼うことができませんので、愛玩用には外国の鳥を飼うことになります。外国の鳥であろうが、家族と同様に愛着をもって飼う方が圧倒的に多いでしょうが、野に放つことが鳥に自由を与えることと勘違いしている方も少なくないようです。
野に放たれた外来鳥類の多くは、その土地の環境や野生に適応できずに命を落とします。また運良く(?)適応して種の繁栄に成功した種は、その地域の生態系を攪乱させる侵略者として、いずれ人間に排除される運命を辿ることでしょう。
同じ尊い命をもった鳥達ですが、「野の鳥は野に、外国の鳥は飼育下に」と、明確に分けて考えることが、お互いを尊重することになるようです。



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吉成 才丈