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| ───────────────────────────────── 第22回 この秋、身近な環境で思わぬ出会いを楽しむ方法 ───────────────────────────────── 〈近所の緑地に注目〉 「オオルリやキビタキを見たいけど、なかなか山に出かけられない…」とお嘆きの皆さん、近所の緑地を歩いてみてはいかがでしょうか? 「そんな馬鹿なことはない、オオルリもキビタキも、丘陵や山地の森林や沢沿いなどに生息すると図鑑に書いてある。都会の緑地になどいるものか!!」と、お思いになるのも無理はありません。しかし、もう少し図鑑を注意深く見てみると、オオルリもキビタキも"夏鳥"と書いてあります。 夏鳥とは、繁殖のために春に飛来し、秋には越冬地に去っていく鳥たちのことです。ということは、繁殖地と越冬地の間を移動する際には、必ずどこかを通過しているはずです。そうです、私たちが気付かないだけで、多くの鳥たちが私たちの身近な環境を経由(通過)して移動しているのです。また春は、繁殖地へ一気に移動してしまう傾向がありますが、秋の渡り期間は比較的長く、身近な環境で憧れの鳥たちに出会うチャンスは春より多くなります。またそれは、どんなに無機質にみえる都会であっても変わりありません。「アカショウビンが都心の高層ビルに衝突したり、サンカノゴイやヒメクイナが東京都23区内で保護されたりした…」と聞けば、少しは実感がでてくるでしょうか。さらに私の周囲のこの2〜3年の記録だけでも、世田谷の民家庭ではコルリが、大田区の公園や河川敷ではコマドリやノゴマ、シマセンニュウなどが、神奈川県川崎市多摩川河口(羽田空港の向かい)の桜並木ではキビタキやサメビタキ類、カッコウ類などが観察されていることなどを聞けば、皆さんがお住まいの近所であっても、いろいろな鳥たちに出会える可能性があることがお分かり頂けるかと思います。 本州中部の丘陵や山地を例にみると、オオルリやキビタキだけでなく、サンコウチョウやサンショウクイ、クロツグミ、コルリ、アカショウビンなどなど、多くの憧れの鳥たちが"夏鳥"であることが分かるはずです。つまり確率の高低に差こそあれ、秋(主に9〜10月前半)には、繁殖を終えた夏鳥の成鳥や幼鳥が各地で観察される可能性があるということになります。 他の小鳥類と同様、朝早くの鳥に"動きがある"時間帯が観察に最適であるといえます。気持ちのいい季節でもありますから、少し早起きして、近所の緑地をゆっくりと歩いてみてはいかがでしょうか。思わぬ出会いは、意外なほど身近にある場合があるはずです。 〈台風の動きに注目〉 秋は台風の被害が心配され、とくに農業に関わる方は、収穫の時期を迎えてその進路が気になることでしょう。これまでは本州直撃を逸れていた夏の台風も、気象変動により、直接的な被害が心配されるようになりました。 そうした台風ですが、農作物や人間の生活だけでなく、野鳥に与える影響も深刻なものがあります。とくに繁殖期以外を海上で過ごす海鳥は、まさに生死に関わる深刻な事態なのです。 海上で発生した台風は、その進路方向を中心に海鳥や海辺の鳥を押し出していきます。また台風の目に入った海鳥はそこから抜け出すことができず、そのまま台風と共に進路方向に運ばれていくことが予想されます。 本来は海上で過ごす海鳥が、河川の上流部で観察されることは決して珍しいことではありません。東京周辺では、2006年の秋にオオシロハラミズナギドリが多摩川の上流域で観察されましたし、他にもミズナギドリ類やトウゾクカモメ類、アジサシ類などが東京湾に注ぐ河川の上流域で観察された記録があります。先日上陸した台風9号が通過後にも、多摩川の中流でベニアジサシなどが観察されました。 また「新宿区の上空をシラオネッタイチョウが飛んでいた」、「三番瀬でシロアジサシの落鳥個体を拾った」といった話しも聞いたことがあります。 しかし本当に驚くのは、かなり内陸の山間部水域の記録です。私が知っているだけで、長野県・諏訪湖や山梨県・山中湖、佐賀県・山間部ではオオミズナギドリが観察されたほか、群馬県・榛名湖では3年前の秋、オオミズナギドリとアカオネッタイチョウ(若鳥)が観察され、アカオネッタイチョウはその後保護されました。榛名湖に至っては本州の丁度真ん中近くに位置し、日本海側にも太平洋側にもかなりの距離があります、また湖自体の標高は1,000m以上あり、周囲も標高1,300〜1,400mの山々に囲まれた地形であることを想像して頂ければ、台風が海鳥に及ぼす影響の大きさを実感できるのではないでしょうか。 いずれにしても、台風は海鳥や海辺に生息する鳥を、本来の生息地や生息環境とかけ離れた場所に運んでいきます。したがって台風通過後には、予期せぬ出会いを求めて海辺や河川沿いで探鳥するバーダーも少なくありません。また台風の発生場所や進路などから運ばれてきそうな種を推測し、目的の鳥を定めて出かける強者もいるようです。 〈鳥見は安全が最優先〉 台風通過後に運ばれてくる鳥を紹介しましたが、探鳥の際には、くれぐれも無理な行動は謹んで下さい。台風通過後といっても、鳥が見られるようになるのは、ある程度の時間が経過した後の話です。増水した河川に近づくのはもちろん、雨風が強い中を移動するにも大きな危険があります。 台風とは関係ありませんが、残念ながら、鳥見の最中に事故で亡くなるケースも発生しています。河川の急な増水による水難、海岸の堤防から海への落下、熱中症、転倒、野犬や野生生物との遭遇など、日常生活よりは危険が多いことを認識しておく必要があります。またある意味、自然環境や他の動物より、人間が一番危険かもしれません。夜間に移動して車中で仮眠する場合にも、場所を選んだ方がいいかもしれませんね。 Hobby's World 吉成 才丈 |