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| ───────────────────────────────── 第25回 2007年最大のニュース 「フィールドガイド」増補改訂版の発売 ───────────────────────────────── 高野図鑑」と聞いてピンとくる方は、少なくとも10年ほどの鳥見のキャリアがあるのではないでしょうか?「高野図鑑」の正体は、(財)日本野鳥の会が1982年に発行した「フィールドガイド日本の野鳥」という図鑑ですが、発売された当初は、従来の常識を覆すような画期的な図鑑の出現に興奮したものです。 当時の私は20才で、大学2年生生でした。大学入学までは鳥などに興味はなく、むしろ幼少期のある体験から鳥嫌いだった私は、趣味の釣りをきっかけに生物部に入ります。当然のことながら、入部当初は魚を中心に活動していましたが、全部員が参加する行事で野鳥を見るうちに、野鳥の魅力に取り憑かれていきました。そこで部室にあった図鑑や本を片っ端から読みあさりましたが、本から得られる知識だけからでは、なかなか識別力が身につきません。また、どの図鑑もフィールドで使うには一長一短があり、何冊もの図鑑を持ち歩いていました。「フィールドガイド日本の野鳥」が発売されたのはそんな時です。 「フィールドガイド日本の野鳥」では、分類順に似たもの同士が同じような姿勢で描かれており、種の特徴が一目で分かるように示す工夫もあり、互いを比較するのに役立ちました。また種ごとの情報量も多く、生息環境や生息時期(渡り区分)、繁殖や行動、採餌に関する情報なども網羅されており、まさにフィールドで使用するウォッチャーの知りたいツボをおさえた心憎い構成でした。それもそのはず、絵や解説を担当した故・高野伸二さんは、鳥以外にも自然全般に幅広い知識を持つフィールドの達人だったのです。当時の私は探鳥会にも出たことのない学生でしたから、高野さんの偉大さを知る由もありませんでした。しかしよく考えてみれば、「フィールドガイド」というより「高野図鑑」と呼ばれるということ自体、利用者が高野さんの偉業を称えているということなんでしょうね。いずれにしても、この図鑑が出版されたおかげでバードウォッチャーの識別力は向上し、新たな観察記録も多数報告されるようになったとのことです。私自身も、大変お世話になりました。 残念ながら、高野さんは1984年にお亡くなりになりましたが、その後「フィールドガイド日本の野鳥」は、谷口高司さんの作画により新たな種を追加し、1989年に増補版が出版されました。こうして、常にバードウォッチャーのバイブルとして活用されてきた同書でしたが、ついに昨秋、増補改訂版として新たに発売されることになったのです。今回の改訂では、谷口高司さんの作画によって新たに38種が追加されたほか、なんと原画にまで手を入れて修正した種もあるそうです。言われないと気づかないほど、原画に近いタッチで修正する高度な技術はさすがですが、谷口さんによると、相当の緊張感と責任感があったそうです。 今回の改訂では、分類は日本鳥学会の「日本鳥類目録 改訂第6版」に基づくことになりましたので、分類自体だけでなく、目名や科名にも従来と異なる名称が使用されている部分もあります。また、種ごとの解説も最新の情報が取り入れられているのはもちろん、バードウォッチングに必要となる基礎的な知識や野鳥の見方、生態的なものまで分かり易く示されていることから、初心者の方にも 分かり易い構成であるといえます。Hobby's Worldでは、入門者は(財)日本野鳥の会の「新山野の鳥」「新水辺の鳥」で身近な野鳥をある程度覚えてから「フィールドガイド日本の野鳥」を見た方が分かり易いと説明していましたが、今回の増補改訂版なら、最初から自信をもっておすすめできそうです。 同書についての詳細な解説は、(財)日本野鳥の会の機関誌「野鳥」2007年10月号と11月号に記されています。また、Hobby's Worldのホームページでは、谷口高司さんの奥様である谷口りつこさんによるエッセイ「着物でハーネス」を連載していますが、その第19羽で、今回の図鑑が完成するまでのエピソードが紹介されています。高野さんを"神様"とまで尊敬していた谷口さんですが、なんと谷口さんの結婚式の当日に高野さんが亡くなったというエピソードには驚きました。まるで役割を引き継ぐように、高野さんが谷口さんにバトンを渡した…と感じるのは私だけでしょうか。増補版や今回の増補改訂版を谷口さんが手がけることになったのも、とても偶然とは思えません。 今では高尚な(?)趣味として市民権を持つバードウォッチングですが、バードウォッチングという言葉さえ、知られるようになったのはつい最近のことなのです。「フィールドガイド日本の野鳥」は、バードウォッチングが広く世間に定着することにも大きな貢献をした1冊であることに違いありません。 歴史に残る仕事には、必ずと言っていいほどドラマがあります。まだご覧になっていない方は、ぜひ一度お手にとってご覧下さい。またすでにお持ちの方は、多くの方の思いのこもった同書を、吟味頂きたく思います。 Hobby's World 吉成 才丈 |