≪野鳥観察情報≫
   バードウォッチングのミカタ
 ======== by 松田 道生さん

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  第7回 おしゃべり
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バードウォッチャーは、おしゃべりだと思います。

バードウォッチャー数人がデジスコを構えて待っているようすを見ていると、たいがいおしゃべりをしています。野鳥録音をするようになって、なおさらバードウォッチャーがおしゃべりであることがわかりました。ようするに、うるさいのです。近頃のバードウォッチャーの傾向として高齢者が多いので、耳が遠いため大きな声で話をするのは困りものです。これでは、出てくる鳥も出てこないと思うのですが、楽しそうにおしゃべりをしています。

録音のチャンスのタイミングを計るために、聞こえるともなく聞いていたことがあります。そうすると、おもしろいのは今いる鳥の話ではなく、別のところの鳥の話題を話していることが多いですね。たとえば、海外でのバードウォッチングの話から北海道や沖縄へ行った時の話が、いちばん自慢げです。また、谷津干潟であったならば、目の前にいる鳥ではなく、かつて谷津干潟で見た珍しい鳥の話、過去の話をしています。狭山でサンコウチョウ待ちの集団のそばにいたこともありますが、サンコウチョウの魅力を語るのではなく、話題は舳倉島の野鳥情報でした。基本的には自慢話なのですが、さりげなく自慢する人から鼻につくほどの自慢話まで、バードウォッチャーの人柄がわかっておもしろいことはおもしろです。

ただ、なぜその場の目の前にいる鳥について、なぜ語らないのでしょうか。不思議です。谷津干潟の目の前にいるハマシギであっても、餌の取り方から羽色の違いなど興味深い観察ができると思うのですが、話題になりません。

おかげで、どこへ行ってもバードウォッチャーの集団がいると避けるようになりました。きっと、愛想のない奴と思われていることでしょう。

と書くとまるで、私は寡黙な人間と思うかもしれませんが、かく言う私もおしゃべりです。おしゃべりが大好きです。私とバードウォッチングの指向が同じ、感性が同じ方との話も楽しいのですが、違う観点から野鳥を見ている人との話も興味が尽きません。

たとえば、仕事をいっしょにすることの多いイラストレーターのM谷さん。彼は、絶対音感のように一度見たものを頭のなかにイメージとして記録できる特技の持ち主です。ですから、40年以上も前に卒業した小学校の教室の風景から、昨夜泊まったペンションのドアノブの模様まで、覚えていて描くことができます。それだけに野鳥の観察眼は、すごいものです。教えられることの多い会話を楽しむことができます。

最近、仕事をしたイラストレーターのM輪さんには、よく東京湾沿岸のポイントを案内をしていただくことがあります。彼は調査をしたり論文を発表したりという、学究指向がある方なので、また鳥を見る目が違います。圧倒的なフィールド経験からの野鳥の知識は、図鑑に書いていないことばかりです。

先日、来訪した北海道天売島でガイドをお願いしたT沢さんとの話も面白かったです。島の野鳥たちについて、まるでご自分の手のひらの上のようにご存知なのですから驚きです。ウトウが、たくさんのイカナゴをどうしてくわえられるか。この質問に答えられるバードウォッチャーは少ないでしょう。ツノメドリは上くちばしの裏には”かえし”があって、そこに魚を引っかけて次の魚を捕ると言われています。ウトウも同じかと思ったのですが、違うそうです。ぜひ、この謎の解明のために天売島を来訪してみてください。

最近、没交渉になってしまいましたが、鳥友H口さんとの話が面白かったです。彼は、長年にわたるフィールド経験に加えて「一度、家に入った紙は、絶対に外に出さない」と豪語しているだけに、日本の鳥関係の論文や著書についてメチャ詳しいのです。私もかなりの蔵書があるつもりですが、彼には負けます。それだけに、話は知識と教養のぶつかり合いで、彼とのおしゃべりから自分の知識が切磋琢磨されていく快感を味わえます。ただし、とても疲れるバードウォッチングとなります。

先日もフィールドで顔見知りのバードウォッチャーから話しかけられました。話の内容は、どこそこで○○を見たという話の数々です。彼の場合は自慢ではなく、私に情報を伝えたいという厚意からのおしゃべりなので、聞いていて嫌みではありませんが、歯ごたえがありません。私にとって退屈なおしゃべりは、ただ鳥がいたというだけの話なのです。

こんなことを書くと、これから話かけてくれる人がいなくなるかもしれません。