≪野鳥観察情報≫
   鳥観察・探鳥の極意
 ======== by 吉成 才丈さん

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  第29回 牛や鹿は北を向き、人と鳥はどこを向く?
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日本人には縁起の悪いと言われる就寝時の"北枕"ですが、何を隠そう、私は30年以上の北枕派です。理由は単に「よく眠れるから」ですが、つい最近まで、それが何故なのかを調べたことがありませんでした。
先日、放牧中の牛や鹿が北か南を向いている割合が高いとの報道がありました。これは、ドイツとチェコの研究チームがまとめたもので、グーグルアースが提供する衛星画像をもとに、五大陸308箇所の牛8,510頭を調べた結果だそうです。また、チェコでは鹿を対象に調べたところ、エサを食べたり休息したりする個体の大半が北を向いていたそうです。当然、太陽の位置や風向き等も影響しそうですが、そうした影響もなく、さらに実際には一致しない地図上の南北ではなく、地磁気が示す南北に同調していたというのですから驚きです。研究チームは「地磁気に反応している」と推測していますが、それならば、地磁気は人間や渡りを行う鳥にも影響しているのでしょうか。

そもそも"北枕"は、お釈迦さまが入滅された時、頭を北に(顔を西に向け、右脇を下に)していたということに由来しているようです。つまり、死者を寝かせる時は頭を北にすることから、北枕は縁起の悪いものとされたようです。では実際にはどんな影響があるかを調べたところ、迷信とは逆に北枕肯定派が多いことに驚きました。
北枕肯定派の考えは、「人間は地磁気の影響を受けており、血液循環をスムーズに行うために、地磁気のエネルギーを利用すると効果的」といったものです。なんでも、人間の頭はN極、足はS極であるため、頭を北向けにするのが自然の姿勢であると考える方もいるようです。自分の頭がN極…と言われてもぴんときませんが、私自身、いろいろな方位を試した中で、北が一番落ち着くように感じたのは事実です。(家の構造もあるのかもしれません)
また、興味深いのは、完全に地磁気から遮断される潜水艇内、人工磁場に身を置く宇宙船内など、通常とは異なる環境下での人体の影響が半世紀以上前から研究されていたということです。その結果、地磁気の変化は直接的に人体に影響を与えるだけでなく、精神や神経にも影響を及ぼし、そうした要素が作用しあって判断ミスを誘発したり、何らかの病気を発症したりすることがわかってきたそうです。

さて鳥ですが、一般に渡り鳥は、地磁気を感じ取る生体コンパスを有し、太陽や星座だけでなく、地磁気をも感じ取って方向を知るといわれています。こうした事実は広く知られていても、普段鳥がどの方向を向いているかまでは、調べられていないようです。
地上に降りる機会の多い野鳥の多くは、一般に風上を向くことが多いと思われています。これは、風上に向いていれば、危険を回避しやすいためと考えられているためで、助走しないと飛び上がれないハクチョウ類などの大形の鳥で顕著なようです。また、ミズナギドリやアホウドリなどの翼の長い種を観察していると、風のあるときには、海上で風上に向かって翼を広げるだけでフワッと浮き上がる様子を目撃することがあります。凧が風上に向かって揚がるようなもので、労せずして浮上できるのでしょうね。
また、ミユビシギにもおもしろい習性があり、強風時には風上に向かって一列に並びます。当然、先頭に立った個体は風当たりが強く、「あ〜っ限界、もう耐えられない…」とばかりに列の最後尾に移動します。すると2番目の個体が先頭になり、しばらくすると、やはり強風に耐えかねて最後尾に移動します。すると、3番目の個体が先頭になり…と、次々と列の順番が入れ替わり、何とも微笑ましい光景が観察されます。風が強いと砂浜では砂が舞い、人間だけでなく機材の傷みも心配ですが、そんな条件の悪い時にはミユビシギを探してみましょう。
そんなことがあるにしても、もし無風で周辺環境に変化がないような場所で休息していたら、鳥はどの方位を向くのでしょうか。もしかしたら、大型の種なら、そうした傾向がつかめるかもしれませんね。そのうちフィールドでも、方位磁石とにらめっこしながら、鳥の向いている方向を記録する方が増えてくるような気もします。

鳥が有する生体コンパスですが、どうやら人間にもあることがわかってきたようです。ただし生活上、鳥ほどには必要とされていないため、感じ方には個人差があるのかもしれません。
皆さんも渡り鳥になったつもりで、北枕を試してみてはいかがでしょうか? たとえ何も感じなくても、風水上では、北枕は材運が向上するらしいですよ。もっとも、私は北枕でよく眠れても、材運が向上する気配は一向にありませんけど…。


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吉成 才丈