≪野鳥観察情報≫
   バードウォッチングのミカタ
 ======== by 松田 道生さん


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  第20回 下宿は四畳半から
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私が実家から出て、初めて下宿をしたのは東京都北区十条でした。地名は十条でしたが、部屋は四畳半。狭い部屋に本がいっぱいでした。それでも十条は下町の風情の残る街で、生活はしやすいところでした。はじめて買った車は、軽自動車でした。カーキ色のジムニー55です。60km/hを出すと、あちこちがガタガタいいましたが風情のある車でした。

下宿は四畳半から、車は軽からというのが人生のステップアップを図る手順だと思うのですがいかがでしょうか。ところが最近では、最初から住まいはワンルームマンション、車は普通乗用車になってしまいました。

ひるがえって、私がバードウォッチングを始めて最初に買った双眼鏡はテレスターという名の知れないメーカーでした。神田の古道具屋で買った中古です。そして、私の最初のバードウォッチングは屋根の隙間から見たスズメでした。スズメの目が、あまりにも鋭い野生の眼をしているのに感動したことを今でも覚えています。

バードウォッチングも双眼鏡はノンブランド、野鳥はスズメからが基本だと思いますがいかがでしょう。ところが最近は外国製の高級双眼鏡を持っているのでベテランかと思うと、初心者だと聞いてびっくりしました。いきなり20万円以上もする双眼鏡を買ってしまう人、買える人がいるのですから世の中、変わったものです。

野鳥もスズメ、カラスから始めるべきだと思います。身近な鳥のスズメやカラスを見つけ観察することができて、今までスズメだと思っていたのがカワラヒワであったり、ジョウビタキという鳥だったという驚きがバードウォッチングのステップアップをはかります。また、ハシブトガラスとハシボソガラスを絶えず区別することで、識別眼を養えますし、ワシタカ類の大きさの基準となるカラス類の大きさが頭に入るわけです。

また、たとえばシギ・チドリ類ならば、シロチドリ、コチドリを押さえてからメダイチドリがわかり、そしてこれらをマスターしてオオメダイチドリを見つけることができるという順序です。ところが、最近のバードウォッチャーのなかには、シロチドリとコチドリの区別もできないのに、いきなりオオメダイチドリ、あるいはコバシチドリ、オオチドリを見たいう者がいます。

珍鳥○○を見たと言うので、数10年を越えるベテランかと思うと、まだバードウォッチングをはじめて数年の初心者と聞いて、これまた驚いたことがあります。では、どうして初心者がそんな珍鳥を見つけることができたとか不思議に思い聞いてみると、仲間からの出現情報をもらい現地に行ったら集団で鳥を見ているグループがいたので教えてもらって見つけることができたということでした。あるいは、珍鳥のメッカである日本海側の離島へ行き、見たというものです。このように初心者ですから、自分で見つけることはできません。情報と他人頼りのバードウォッチングをしているわけです。

どうもこの傾向がかなり強くなってきた感じがします。その弊害が、バードウォッチャーの集中化です。珍鳥がでると、あるいは珍鳥がでる離島にバードウォッチャーが集団で押しかける問題です。同様にスズメを撮ってカラスを撮って、ジョウビタキを撮りとステップアップをはかるべき野鳥写真も、いきなりサンコウチョウ、アカショウビン、ブッポウソウと写しがいのある鳥に野鳥カメラマンが集中するもの同じ原因でしょう。

他にもいくらでも居ると思うのですが、自分から見つける知識も経験もないのです。ようするに、基礎からやっていないので自分で見つけることができず情報に頼るしかないのです。あまつさえ、自然の中に出かけても見たい鳥を見逃している可能性も高いことでしょう。

下宿は四畳半から、バードウォッチングはスズメからの基本に立ち返ってみてはいかがでしょうか。