≪野鳥観察情報≫
   バードウォッチングのミカタ
 ======== by 松田 道生さん


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  第21回 群れで鳥を見ない
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鳥は、なぜ群を作るでしょう。群れて仲間の目が多ければ、天敵を発見することができます。数が多ければ、警戒心の強い個体がいて警告を出してくれ命を守ることができます。同じように食べ物の発見も誰かが見つけてくれるので、命を長らえます。

バードウォッチャーも集団でいれば、誰かが鳥を見つけくれますし、誰かが名前をわかり教えてもらえます。集団で鳥を見る効果は、天敵を早く見つけ食べ物をたくさん得る効果と同じ理由があります。人の場合、これに加えて皆と同じ鳥を見ている、あるいは同じ写真を撮れたという安心感もあると思います。

ところが、鳥仲間のTさんは「群れで鳥を見ない」というコンセプトでバードウォッチングをしています。「群れを見ない」ではありません。群れている鳥は見ます。人の方が群れて=集団でバードウォッチングをしないということです。ですから、探鳥会やバードウォッチングツアーに参加することはありません。ベテランのTさんですから、探鳥会で学ぶことも少ないでしょう。バードウォッチングツアーで行く場所や時間も、自家用車やレンタカーを利用すれば、好きな時に好きなところに行けるのですから参加する必要はありません。

Tさんは、私も含めて気のあったバードウォッチャー数人といっしょにバードウォッチングを楽しむことはあります。しかし、数10人という集団でバードウォッチングをすることはありません。そのようなイベントには、よほどの義理が無いかぎり参加することはないのです。

私とたまたま三番瀬に行った時、ヘラシギがいました。ヘラシギのまわりには50人ほどのバードウォッチャーやら野鳥カメラマンが取り囲んでいます。鳥が移動すると、その集団もいっしょに流れていきます。知らない人が見たら不思議な光景でした。

もちろん彼は、この集団に入ろうとはしませんでした。おかげで、私は30余年ぶりのヘラシギとの出会いを逸してしまいましたが、群れで鳥を見ないという彼のこだわりに大いに賛同いたします。

Tさんのように、ある程度の修行を積んだら探鳥会に参加する必要はなくなります。そうなると一人の方が気楽ですし、うるさいバードウォッチャーにストレスを感じることもありません。それに何よりも、一人や数人で鳥を見るほうが、腕は上がるはずです。鳥を見つけてもらうのではなく自分で見つけ自分で識別するのですから当然です。それに一人で鳥を見ていると、鳥との出会いが多い上に鳥が近くまで来ることに気が付くことでしょう。人の集団が自然の中を移動する騒音と気配が、いかに鳥を追い払っているかわかると思います。

また、ヘラシギのように人が集団で見ている対象は珍鳥です。群れで鳥を見ないということは、情報が出回った珍鳥を見ないということになります。そのかわり、身近な鳥の思わぬ習性を観察したり、たまたま見つけた珍鳥を貸し切りで見たり、素晴らしい自然の風景のなかで「気持ち良い!」と感動しながらバードウォッチングを楽しんでいます。

ところで、鳥が群れるのは良いことばかりではありません。デメリットもあります。食べ物は発見しても集団でたかれば、競争もはげしくなります。そして、ムクドリやハシブトガラスのように人に嫌われ、追い出されたり捕獲される憂き目に遭うこともデメリットでしょう。

人の方も同じようにデメリットがあります。集団であれば、バードウォッチャー同士、野鳥カメラマン同士の競争が激しくなり人を押しのけて、見たり写真を撮らなくてはなりません。そして、撮れた写真は皆と同じものです。さらに、他の人に迷惑をかけて嫌われるという、ムクドリやハシブトガラスと同じ境遇となり、後ろめたさを感じながらのバードウォッチングを強いられます。何が楽しいのでしょう。

面白いのは、集団で鳥を見ている人たちも、決して群れることを望んでいないことです。自分も群れを構成している一員であることを忘れて「どうしてこんなに人が多いんだろう」と言いながら群れに入っています。思わず「お前がいるかだろう」とつっこみを入れたくなりますが、本人が原因を作っていることを忘れている人が多いですね。

自分で勉強して研鑽を積まない限り「今日も人が多いなあ」と苦言を言いながら鳥を見続けることになるのではないでしょうか。