≪野鳥観察情報≫
   バードウォッチングのミカタ
 ======== by 松田 道生さん

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  第34回 野鳥の時間に合わせたバードウォッチング
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野鳥録音を初めて15年経ちました。とくに、ここ10年間は力を入れています。野鳥録音をしていて、今までない野鳥との出会いや発見をたくさんしています。野鳥とのつきあい方も変わりました。バードウォッチングへの思いも深まり、今まで何をしていたのだろうと思うことさえあります。

とくに、今までのバードウォッチングは人本意のバードウォッチングであったのだと思います。バードウォッチングである以上、野鳥に合わせなくてはならないはずなのに自分の都合に合わせていたのです。

たとえば、野鳥録音の先駆者でもあり第一人者の蒲谷鶴彦先生にご存命のとき「野鳥録音のコツは?」とおたずねしたら「1に早起き、2に早起き、3、4が無くて5に早起き」と教えられました。せいぜい早起きと言っても午前5時くらいと思っていたら、先生の早起きは午前2時、そして現地に3時に着いて野鳥の活動するのを待つというのがお仕事でした。正直、これを聞いて野鳥録音には手がでませんでした。しかし、実際にやってみると、夜明け前の森の静けさ、そして山の端がほの明るくなった頃、谷間からわき上がるように聞こえてくる野鳥の大コーラス。そして、日の出の頃にはもう終息してしまいます。午前4時にはその日の大イベントが終わっているのです。明るくなってからの森は、夜明け前の喧噪を体験すると静かにさえ感じてしまいます。

野鳥たちの朝の早いことは、解っていました。しかし、日の出にはアカハラがもう鳴き止んでしまうとは思ってもみませんでした。昼間、林道の際で食べ物を探すアカハラによく出会っていたので、なんでさえずりが聞かれないのだろうと思っていたのです。そして、私がそれまで見聞きしていたのは、カッコウやホオジロなど昼間も鳴く鳥、あるいは独身のアカハラやクロツグミが昼間も鳴いているのを聞いていたにすぎないことがわかりました。野鳥録音をする以前にも全国各地に行っていましたが、あの時早起きをしていれば、あそこでも日の出を見るべきだったと悔やんでいます。

同じことは、夕方にも言えます。旅先では、だいたい宿の夕食は午後6時です。遅くとも7時、ビールを飲んでしまえばもうバードウォッチングモードは終了です。日帰りでもやはり夕食に間に合うよう、夕方には現地を引き上げてしまいます。

しかし、初夏の森でいちばんエキサイティングなのは、午後7時過ぎです。ひとしきりアカハラ鳴き、マミジロがところによってはさえずってくれるでしょう。そして、一番星が出る頃、ヨタカが鳴きながら飛び、フクロウが鳴き始めます。ムササビが飛び交うのもこの時間です。森ばかりではありません。この時期のアシ原では、オオヨシキリの大合唱がだんだん収まっていくと同時にカエルの合唱が始まります。近くの森からは、アオバズクの声が聞こえてきたことがあります。そして、カルガモが暗闇のなかさかんに活動をしているのを知りました。

まさに野鳥たちの息吹を感じる時間は、日の出日の入りの前後、30分なのです。この時間に、フィールドにいないのはなんとももったいないことでしょう。この薄暮の時間を体験したことのないバードウォッチャーは、野鳥を見てるとはいえないのです。野鳥を知るためのバードウォッチングだったら、野鳥の時間に合わせて行動すべきだったのです。

「バードウォッチングは野鳥のスケジュールに合わせよう」とは、私の書いたバードウォッチングの入門書には書かれていません。これは、大いに反省しています。