≪スタッフ・有志の連載≫
 <第19回> 風の音にぞ…
 ============ by 漂鳥

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  第19回 秋の終わりは華やかに
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今年も残すところ、あと僅かになりました。師走ともなれば、さすがに寒さも募るこの頃ですが、温暖化の影響で夏が長く、秋が短いというのがこのところの傾向のようです。陽の傾き方こそ毎年変わらないのは当たり前にしても、体感的には10月から漸く秋が始まると言ったら言い過ぎでしょうか。それでも秋が深まり、朝夕は寒さを感じ始める11月の末から今月初旬にかけて、山から降りてきた紅葉が里の景色を鮮やかに彩る様を、ここ武蔵野の野山で目にすることができ、ココロ華やぐのでした。

秋の初めは、あの暑く輝く夏が行ってしまうのが名残り惜しく少し寂しくはあるのだけれど、朝晩ぐっと冷え込む晩秋に差しかかれば、暖かい頃にはきらめくグリーンを誇っていた木々の葉が、秋風とともにその艶を失い、元気を無くし、侘びしげな佇まいを見せていたのが、まるで奇蹟のように黄にオレンジに赤にと、様々にその装いを新たにするのです。


10月以降、冬を日本で過ごす鳥たちがやってきました。ツグミすらあまり見られなかった昨季に比べて、今季はその種類はとても豊富で、6年前でしたか、冬鳥がたくさんやってきたときにも似て、多くのバーダーを喜ばせています。当地でもマヒワ・ウソ・キクイタダキなどの小鳥がやって来ています。これらのバーダーに人気のある鳥は、少し探せば今季ならばそちこちで散見されるので、探鳥がとても楽しいのです。

特に、人がほとんど訪れることのないポイントで小鳥たちに出会えた時の嬉しさは格別です。しかもシジュウカラ・エナガ・コゲラ・メジロ・カワラヒワのような留鳥と、ヤマガラ・ヒガラなどの漂鳥、ウソ・マヒワ・シメ・アオジ・ツグミなどの冬鳥が混然となって、わずか数十b四方の環境に計100羽近い小鳥が上へ下へ、右へ左へとかしましく鳴き交わしながら私の周りを飛びちがいたるは、清少納言でなくたって、実に実に「いとおかし」なのです。


小鳥たちはこの環境がよほどお気に入りなのか、混群は数分で移動してゆくのが普通なのですが、このときは1時間以上の長きにわたって、このポイントで上へ下への大騒ぎ、年に数回あるかないかの「大パーティー」が延々と催されたのでした。

さあそうなると小鳥たちは私の存在など眼中になく、この環境に立つ様々な樹木や灌木に生る、様々な木の実や種子を夢中になって食べ続けるのです。ですから鳥が近いこと! 通常、野鳥がこの距離まで人に近づくことはあまりありません。鳥を追うことなく、私が一ヶ所に留まって動かなかったこともあるのでしょうが、それにしても近くまで来てくれます。もともとカラ類はあまり人を意識しないように見受けられますが、他の鳥、例えばアオジのような警戒心の強い鳥でさえ目の前の枝にぽんと留まったりもするのです。数多く集まっている安心感と、何より目の前の御馳走にココロを奪われ、警戒心が緩むのでしょうか。

またよく観察していると、メジロやエナガは樹木の上部で虫やら蜘蛛や蛾の卵や繭などを食しています。ヒガラは樹木の上段から中断にかけて動き回ります。ヤマガラやシジュウカラもそういったものも食べるようですが、この季節は主に地表に落ちた様々な種子を拾うシーンを多く見かけます。マヒワやウソは、アキニレやヒサカキなど好みの実を見つけると、他の鳥の動きなど我関せずといった様子で、ひと所に留まって黙々と食べ続けます。
このように、混群は種によって同じ環境でも食すものや、同じ樹木でも上下左右を巧みに分かち合い、争うことを避けているように見受けられます。小さな小さな小鳥たちの"知恵と工夫"と、そしてなによりその一所懸命に暮らす姿を間近に見られることは、まさに至福と呼んでも大げさではなく、私は暫し陶然となってその場に立ちつくしたのでした。



過日、晩秋の彩りを求めてフィールドを歩きました。
花の少ないこの時季に、山茶花は貴重な彩りだと言えないでしょうか。清楚な白花に対し、艶っぽい赤花はちょっとドキッとさせられるようです。
さらに歩いていると、つややかな色合いのカラスウリが「私を写してね」と声をかけてきたので「はい、喜んで」と答えてパチリと写します。

メジロは本当に熟柿に目がなくて、ヒヨやムクドリやツグミも群がるその間隙を突いて、わらわらっと飛んできては忙しく柿を食します。こちらも忙しくカメラを向けますが、そんなことお構いなしに慌しく動きながら食べ続けます。
それでも何を思ったのか、ふと動きを止めて、優しげな表情を見せてくれる瞬間があります。私は思いのたけを込めて、けれどもそっとシャッターを押しこみます。

晩秋のドウダンツツジの紅葉は鮮やかで、鳥が留まることはないかと毎年のように目を凝らして見ていました。けれども、そんな思い通りに鳥が留まるはずもなく、来る年も来る年もそのシーンに出会えず、冬の到来とともに色を失ってゆく様を見て、また来年かと溜息をつく、そんな風に歳月が流れていきました。
ところが今季、田圃1枚分ほどもあろうという広いドウダン畑を見つけました。すぐ脇には木立ちと藪などがあり、鳥の気配もあります。ある日、暫く様子を見ているとスズメ・ホオジロ・モズ・カシラダカ・アオジなどの鳥が脇を出入りしています。さらに待つと、先ほどドウダンに飛び込んだホオジロが、下からススッと上がってきました。
ややドウダンに埋もれた感もありますが、ようやく鳥を合わせることができて。
また、そのドウダンツツジが映り込んだ水面に浮かぶキンクロハジロを合わせてご覧ください。



華やかだった晩秋の色彩も徐々に衰え、今は静かな初冬を迎えています。
今月に入り、地元の遊水池に3年連続でハクチョウが飛来しました。隣県のハクチョウ飛来地に行ってみると、もう80羽ほどのコハクチョウ・オオハクチョウがゆったりと水面をたゆたっていました。そして三々五々、二羽三羽と飛び立ち、近くの川へ移動する様も見られました。
冷え込んだ空気をものともせず、力強く水面を蹴って飛び立つハクチョウの姿は、来る本格的な冬の到来を否応なく告げているようで、何か身の引き締まるような思いのまま、飛び去りゆく彼らの後ろ姿を私は見つめ続けたのでした。

(了)