≪野鳥観察情報≫
   トリ調べの方法
 ======== by 松田 道生さん

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  思い込みと憶測のバードウォッチングからの脱却
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残念ながら友人知人、あるいはフィールドで出会ったバードウォッチャーから聞く野鳥の話の中には首をかしげるものがあります。例を挙げると個人が特定されますので具体的な話はできませんが、そんなことはありえないと断定できる珍奇なことから、その事実を検証するにはたんへんな作業が必要であると思うことまでいろいろです。

たとえば、私が関わっているカラスでいえば「カラスの卵は黒い」と思いこんでいる人。これは、そんなことはないと断言できます。あるいは「カラスにはボスがいる」と公言する人もいます。私が観察している限りカラスにボスがいるのは思えませんが、もしこれを証明するためには長時間におよぶ観察記録と検証が必要になります。いずれもカラス仲間では笑い話として話されることですが、バードウォッチャーの話の中にもこれに近い話があるのです。

また、野外識別における種類の同定の甘さは、よく指摘されることです。たとえば、トビをイヌワシと思いこんで、その日のビールが旨い!というレベルであれば実害はそうないでしょう。しかし、その情報が一人歩きして「開発と自然保護」といった微妙な問題に絡んでくると困るのです。
 このように思いこみと憶測による知識を持ってしまった方と話をしていると、ある意味”野鳥に燃えている”熱心な方であることが多いも事実です。熱心なだけに珍しい鳥や現象を見たいという欲望が人一倍あります。その欲望がベースとなり、増幅されたりもしているのですからやっかいです。ですから間違いを指摘されたら、たいへん気分を害されることでしょうし過ちを正し解きほぐすには苦労します。

どうして事実でない怪しい話が、広がっていくのでしょうか。

まず、このような話の出所を聞くと多くが人から聞いたこと、口コミが多いですね。誰が言い出したかわからない、出典や原典をたどることのできない情報です。誰がどのようにして確認したかわからないのです。ようするに、いつ、どこで、だれが、どのようにしてといった5W1Hが伴わない情報であることが多いのです。

野外識別では、その種類と断定した条件が曖昧であることが多いのです。要するに”○○を見た”という事柄のみが伝わり、こことここの特徴を確認したので○○と識別したという話が伴いません。

いずれも別の言い方をすれば、客観的な視点から得た情報がないのです。珍しい鳥を見たい、珍しい現象に巡り会いたいという気持ちから主観で判断した情報は、誤る可能性があります。そして、もう一度確認できない、追試できない情報は、科学的とは言い難いのです。専門家は、客観的な視点に基づいて確認することを信条にしています。こういった専門家、それも複数の目によるチェックがされていない情報は信憑性が疑われてしかたないのです。

同時に情報の価値を判断する知識がないことも上げられます。新種ならば標本、日本新記録の鳥であれば、写真記録など物的証拠が必要です。行動や生態の記録であれば、それに見合った観察記録のデータがなくてはならないのです。

また、こういった怪しい話が広がっていく温床には、自分で調べる努力をしない人が多いからではないでしょうか。思いこみと憶測で情報を広める前に、少なくとも大図鑑の記載を読んで確認する、あるいは関連した論文を探し検証するという努力をしているでしょうか。

もちろん怪しい話の中に面白い事実もあり、ひょっとしたら新発見、新知見であるかもしれません。これを新事実として確認するには、入念に検証する努力も必要なのです。こうした努力のないなかで、誤った情報が一人歩きをして野鳥についての誤解を生む現象は避けたいと思います。

では正しい知識をどうやって得るのか、このコーナーで話を展開していきたいと思います。