≪野鳥観察情報≫
   バードウォッチングのミカタ
 ======== by 松田 道生さん

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  第54回 野鳥識別のプロセス
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今年も千葉県我孫子でジャパンバードフェステバルが11月に開催されました。このイベントでは、去年から♪鳥くんの「鳥声クイズ・イントロどん!」が始まりました。これは、♪鳥くんが出題する鳥の声を3名の回答者が早押しで当てるクイズです。3問正解で優勝となります。去年は回答者として、今年は客席に座っての見学です。

鳥の声には自信があるのですが、去年は優勝できませんでした。早押しは若い人には、かないません。私がボタンを押して答えられるのは、皆がわからない難題の鳥となります。難題の鳥ですから、外すこともあって優勝はできませんでした。と、去年は弁解をいたしました。今年は客として聞いていたのですが、けっこう外しました。ですから、早く押せないは関係なかったのです。むずかしいです。

悔しかったのは、知っているはずの鳥の声がわからないことです。何度も聞いたことがあるし録音したこともあるのに、わからないのです。わからないというのは、頭に鳥の名前が浮かんでこないのです。

そこで、普段どうやって鳥の声を識別しているのか、改めて考えてみました。実はベテランになれば、野外で鳥の声が聞こえてくると自然に名前が頭の中に浮かぶものだと思っています。間違えにくい種類の鳥の声であれば、その名前を口にします。もし、同じような声で鳴く鳥が多いグループであれば、その鳥の特徴が聞こえて来るのを確認して、名前を言うことになります。

これは、姿での識別も同じです。見えた鳥の名前が、まず頭に浮かびます。そして、たとえば喉が黒いことが特徴の鳥であれば、その特徴があるかを確認します。たぶん、ベテランは無意識に頭の中で、このようなプロセスを経て識別しているのだと思います。よく言われるように、スズメより大きいか小さいか、くちばしは長いか短いかと、検索項目をチェックして名前を考えてはいないと思います。まず、姿でも声でも名前が先に頭に浮かぶはずです。ですから、鳥の名前が頭に浮かばない場合は、初めて会う鳥か、なじみの少ない鳥となり、珍鳥である可能性が高いことになります。

ところが「鳥声クイズ・イントロどん!」では、みな珍鳥の声に聞こえてしまうのです。ということは、鳥の名前が浮かぶための情報は、音色や節ばかりでなかったということになります。声が聞えてくる前に、そのときの季節があります。会場は秋で、さえずりが聞こえて来るのは違和感があり、そこで戸惑います。つぎに、環境です。手賀沼の畔なのですから、森のイメージがありません。そこで、森の鳥の声を聞かされても名前が浮かばないのです。さらに大きいのは、どこから聞こえて来るかがわからないのです。木のてっぺんか、藪の中か、これらがないと頭に鳥の名前が浮かんでこないのです。

たとえば、去年最初の問題はササゴイでした。これが、わかりませんでした。ササゴイは、その年の6月に岡山市後楽園の池畔の松林から聞こえて来て、すぐにわかり録音もしました。初夏と池の畔と林、木の上から聞こえるというヒントがあったため、頭にササゴイの名前が浮かんだことになります。

音だけのヒントのクイズにより、季節、環境、どこからの要素がいかに重要なポイントであるのかを思い知らされました。逆に野鳥の識別というのは、季節、環境、習性の情報でかなり絞りこめることになります。要するに、出会いの多い鳥はこれらの条件で、あるていどの目安を付けることができ、それでもわからない鳥をていねいに見たり聞いたりすると珍しい鳥にも会えることになるのだと思います。

図鑑の多くは、姿形が最初に書かれ詳しく解説されていますが、環境やどこにいることが多いか、どこで鳴くかまで書いてはありません。これらの知識は、探鳥会でベテランに教わるか、経験を積んで習得しなくてはならない知識です。ですから、珍鳥ばかり追いかけていると、肝心の珍鳥を見つける能力は身につかないことになります。また、珍鳥ポイントで人が集まっている所へ行って見つけるだけのバードウォッチングをしていると、身につかない能力なのではと思います。