≪野鳥観察情報≫
   バードウォッチングのミカタ
 ======== by 松田 道生さん

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  第56回 超望遠レンズが手頃になって
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私がバードウォッチングを始めた頃(1960年代)、野鳥の写真は簡単に手を出せるものではありませんでした。というのは、カメラ本体はともかく望遠レンズがとても高価だったからです。野鳥を撮るとなると500mmは欲しいところですが、私が手の届くのは300mmがやっとでした。当時、300mmは超望遠レンズと銘打って売られていました。少しでも大きく鳥を撮ろうと、埋め立て地で腹ばいになり大きな風呂敷をかぶってシギやチドリが近づいてくるのを待って撮ったものです。それでも、今見るとやっと種類がわかる程度の写真で、ドアップの写真は望むべくもありませんでした。

ところが、今ではコンパクトなデジカメでも500mmを超える望遠効果を得ることができます。それが2、3万円の価格で手に入ります。さらに、最近発売された機種では2,000mmという高倍率で5、6万円なのですから驚きです。今や500mmでは望遠、1,000mm以上にならないと超望遠とは言えない時代となりました。レンズに加えて手ぶれ防止機能の発達が、超望遠の世界をさらに有効にしてくれます。ですから初心者でも双眼鏡や望遠鏡で見た世界をそのまま撮影できます。昔を知っている者にとっては、誰でも、野鳥の美しさ、素晴らしさを写真に撮って楽しむことができる夢のような時代になったと思います。

昔はプロが撮影した写真を見て楽しんだものですが、デジタル化と機材が向上したことで、今では素人が野鳥撮影を楽しめる時代になったことになります。それだけに、探鳥地として知られている公園では、この手のカメラを持った人とたくさん出会います。

私が期待しているのは、望遠効果があるのですから野鳥に近づいて驚かせることが少しでも減ってもらえればと思っています。カメラを肩からぶら下げて歩いていて野鳥がいたらファインダーに捉えてパチパチ撮り、良く撮れたものをFacebookやブログに発表すれば良いわけですから鳥へのプレッシャーが減ってくれればと思っています。

果たして、私の希望どおりになるのか懸念があります。多くの野鳥カメラマンは、鳥を少しでも大きく撮りたいと思っています。昔は、鳥の種類がわかる程度の写真で良かったのですが、あるところから羽1枚1枚がわかるような写真がもてはやされるようになりました。この傾向をたどると、1970年代に週刊で発行された「朝日=ラルース 世界動物百科」の影響が大きいと思っています。この雑誌は名前のようにフランスで発行された内容をベースに、日本の鳥の話を加えて編集されていました。

ヨーロッパの写真の多くは飼育下のものが多く、それだけにアップの写真が多数掲載されていました。編集者は、それに合わせるように日本の野鳥の写真も大きく撮れたものを採用したのです。そのため、当時のプロの野鳥カメラマンたちは、少しでも大きく撮るように努力したものです。「羽軸まで見える写真」というのが、言わば合い言葉となって野鳥を追いかけていました。その傾向が、今も続いているのかもしれません。

機材が良くなって大きく撮れるようになったのですから、それで満足すれば良いのですが、人の欲望は果てしないのが常。より大きく撮ることを求める傾向は、変わることはないでしょう。もちろん、野鳥を驚かさないでていねいに撮る方もたくさんいると思います。ただ、安価なデジカメの普及で野鳥を撮る人が爆発的に増える可能性があります。その結果、マナーの欠如した人も出てくる可能性は大です。

機材の向上と普及に、マナーが追いつかない事態を避けられないものでしょうか。