≪野鳥観察情報≫
   バードウォッチングのミカタ
 ======== by 松田 道生さん

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  第67回 何が楽しんですか?
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「何が楽しんですか?」と、久しぶりに聞かれました。

今年の春、兵庫県北部の山を巡ったときのことです。宿は、スキー場のそばにある合宿所みたいなところでした。シーズンオフなので客は私たちだけ、そのため宿の主人が夕食の鍋の用意をしてくれました。このようなシーズンにやってきた3人組のオジさんに興味を示したのか、何をしに来たのか聞かれたのです。当然「鳥を見に来た」と答えたときの反応です。関西なまりで聞かれましたので、いっしゅん何をたずねられたのかわかりませんでした。そのため、2度聞かれました。

昔、趣味をたずねられて「鳥を見ている」というとよく言われた台詞です。もちろん、バードウォッチングなんていう言葉はなく、仲間内では探鳥と言っていた時代のことです。探鳥と言っても通じないのはわかっていたので「野鳥観察です」とか「鳥を見ています」と答えたものです。たいがい、相手はきょとんとした顔をして「何が楽しいのか」と言われたものです。皮肉っぽい人だと「鳥を見てお腹がいっぱいになるか」などと、質問が展開していきました。

それが「それは良いご趣味ですね」と言われるようになったのは、いつの頃でしょう。「趣味は?」と聞かれて「野鳥観察です」と答えたら「バードウォッチングですか」といわれたのは、1980年代以降のことだったと思います。日本野鳥の会の会員が、1万人を超え紅白歌合戦に出演、サントリーの愛鳥キャンペーン、そしてアウトドアブームがあってバードウォッチングもその一つのアイテムとしてよく紹介されことが大きく影響していたと思います。

ところで「何が楽しいのか」答えるのは難しいです。昔、仲間内ではわかる者しかわからない、私たちだけでも楽しめれば良いという雰囲気もありました。仲間のなかには、有意義なことなのだから一人でも多くの人に知ってもらいたいと、熱弁を振るう者もいました。健康に良いから、お金のかからない趣味だからと言い方はいろいろあります。横で聞いていると、テレビショッピングのトークみたいに聞こえてしまうのは私だけでしょうか。ですから、話せば話すほど相手が怪訝な顔になってしまうのが常でした。今回は、いっしょにいた仲間が、自然の中での鳥との出会いの素晴らしさを語ってくれましたので、少しは理解していただけたようです。しかし、話は当然「金儲けになるのか?」となり「原稿を書いて鳥の声の音源で多少は・・・」と話をすると、やはり怪訝な顔つきになってしまいました。

仲間が「ここには、イヌワシがいて素晴らしいところだ」という話になり、地元の方だけにイヌワシの存在は知っていました。また、赤い鳥がいるという話になり、アカショウビンの声を聞かせたら間違いないとのことでした。イヌワシとアカショウビンは、バードウォッチャーや野鳥カメラマンがよだれを垂らしてやってくる。スキーのシーズンオフに客が来るかもしれないという話には、とても興味を示してくれました。

鳥が地域の活性化に結びつき、地元の利益につながる可能性がある時代になりました。専門的な知識を基盤に適切な管理のもとに行うべきと賛否はあると思いますが、やはり鳥でお腹がいっぱいになる話のほうが、わかりやすかったようです。