2007年1月23日


  希望小売価格(税込)¥157,500
【本体価格 ¥150,000】
対物レンズ有効径 77mm
全長:304mm   重量:1330g



 
2006年12月1日、興和株式会社から新型スポッティングスコープTSN-774と命名された新製品が兄弟機TSN-884と同時に発売された。
興和株式会社はプロミナーシリーズとして高性能スコープのラインナップも業界でNo.1の充実度である。フラッグシップのTSN-884、に続き今回レポートするTSN-774、デジスコの定番機種と誉れも高いTSN-664、TSN-604、TSN-504とラインナップされている。下位2種は別として88mm、77mm、66mmと並び数字にこだわりがあるようである。
この中で中堅機種となるTSN-774の最大の特徴はニュースリリースにもあるように、「バードウォッチャーを中心とした自然観察や、デジタルカメラ、ビデオカメラとの組み合わせによる超望遠撮影(デジスコ、ビデスコ)の用途」とあるように撮像用途に重きをおいていることがわかる。それでは実際にどの程度デジスコに配慮された製品なのかを焦点としてレポートしたい。

 
スコープ本体
 
対物レンズは77mmのデジスコ向きな設定である
 
TSN-774(及びTSN-773)に採用された対物レンズは77mmXD(eXtra low Dispersion lens)レンズと呼称し、EDレンズという表記をしていないところが興味深い。TSN-664の時代から興和のEDレンズはフッ化カルシウム成分が高いと噂があった。2群3枚の対物レンズ群はかなり贅沢な仕様になっており、他メーカーのEDレンズシステムとの差別化を含めてXDと呼ぶことにしたようである。色にじみや歪曲収差を可能な限り低減したいという開発意図が伝わってくる。
高精度なXD77mmレンズはデジスコ向きの被写界深度をもつ
 
微動と粗動が組合されたデュアルフォーカス
 
使いやすいデュアルフォーカスノブの設計もデジスコ重視の設計
2周強でロックtoロックとなる大きな直径の粗動ノブと軽く滑らかに動く微動ノブを装備し、観察・撮影とも使いやすいデュアルフォーカスシステムが構成されている。ノブの配置も自然に手が置ける場所に位置していて使いやすい。
 
堅牢・軽量なマグネシウムボディー
 
軽量樹脂筐体にこだわっていた興和が一転して頑強なマグネシウムムボディーに変更された。チクソモールディングという最新の射出成形法による薄肉で高剛性ボディは樹脂に比べ熱による寸法変化も少なく光学機器筐体には現行では最良の選択と思う。頑強な金属ボディーにはネイチャー志向の質感の良いグリーン塗装が施され、ボディーデザイン・性能とも高く評価できる。
チクソモールディングによるマグネシュームボディーは軽量・高剛性
 
機動性に優れたコンパクト設計
 
確かにTSN-774は小さく見える。寸法的な面だけではなく大きく見せない巧みな意匠も功を奏しているのであろう。気持ちとしては他社65mmタイプより小さく感じてしまう。このコンパクトなボディーに77mmの迫力あるシステムが納まっているのであるから驚きである。
コンパクトに設計された意匠
ニコンED82より小さく見える
 
アイピースロック機構
 
バヨネット機構によるアイピース固定はスピーディーで好ましい反面、デジスコ用カメラユニットなどを取り付けると光軸のズレにつながることが多くそんなに頻繁にアイピースを交換することのないデジスコにおいては特にバヨネットである必要も感じない。しかし、今回のバヨネットは大きさも、本体付属の板バネもダイナミックでしっかりカメラユニットなどを含めた重量にもしっかり対応できそうである。また、アイピースロック機構はデジスコにおいては必須ともいえる機構なので標準装備されたことで安心感が高まった。
ズーム接眼を使うためにもロック機構は必須
 
こだわりある三脚マウント
 
大きなカメラネジでしっかり固定できる設計は回転防止に効果的
頑強な回転式台座が標準装備されている。45度ごとにクリックする場所はあるが、基本的には自由な角度で固定できる。幅広の台座には3/8インチの三脚ネジと回転防止の穴が2つ準備されている。多くのスコープは1/4インチのネジが装備されているのであるが「思いっきり締め上げてください」と自信をもってユーザーにアピールしているのであろう。実際に、3/8インチネジであれば渾身の力で締めてスコープの回転ズレを防止できる気がする。もちろん、3/8から1/4インチに変換するスリーブネジも装備されている。
 
接眼レンズ
 
高性能アイピースの新規ラインアップ
 
今回は新型アイピースとして3種類ラインナップされた。20〜60倍のズームレンズ(TE-10Z)、30倍ワイド単焦点レンズ(TE-17W)、25倍ロングアイレリーフアイピース(TE-20H)。デジスコにおいてはTE-17Wが中心的な存在になると思われる。但し、TE-10Zがとても面白くデジスコで使えるので30倍以上を求めるユーザーにはTE-10Zが気になってくると思う。ハイアイのTE-20Hは射撃などの用途を中心としたアイピースと思われるが、アダプターを共通で使えるので長いアイレリーフを必要とするカメラへの対応幅が広がる可能性はあるといえる。
デジタルカメラとの接続にはTSN-DA10と各種アダプターリングで接続できる。
30倍単焦点、20〜60倍ズーム、ロングアイレリーフの3種
 
アイピースの防水加工による安心設計
 
このアイピース群はかなり高級なものと位置付けて間違い無さそうである。アイピースの防水加工を謳っているが、レンズの大きさや面倒なレンズ1枚1枚のコバ塗りなど丁寧に作っていることがうかがえる。値段は高いが、その価値は充分あるように思う。
今までのアイピースに無い品質本位のこだわりがある
 
アイピースコンバーターのラインナップ
 
TSN600,800シリーズのアイピースも使える変換リングも揃っている
今回の新型アイピースを従来のTSN-664やTSN-824Mに取り付けることはできないが、旧来〜現行までのアイピースをTSN-774/884に取り付けるためのアイピースコンバータが2種用意されている(TSN-EC2/EC3)。また、ビデオアダプター用のコンバーターリングTSN-VA2-CRを使うとDIGISCO.COM社のTurboAdapterP1が取り付けできるため、光軸を極めたがっちりした接続も可能である。さらに、同社のNKAという変換アダプターを使えばDIGISCO.COM社製接眼レンズアダプターやニコン製アイピースも接続可能なのでニコンからの引越し組も出てくる可能性がある。
TurboAdapterP1もジャストフィット
 
NKAを使えばTurboAdapter接眼やニコン接眼まで使える
 
業界初のズーム方式一眼レフ用アタッチメント
 
一眼レフ用のフォトアタッチメントが2種用意されている。なんと言っても業界初の680mm〜1000mm(F8.8〜13.0)のズームができるTSN-PZが特徴的である。950mm(F12.3)の単焦点TSN-PA2Dも準備されている。
ズーム機能がついた一眼レフ用アタッチメント
 
デジタルカメラアダプターやビデオアダプターを準備
 
ビデスコも思いのまま楽しめる
デジスコやビデスコに必要な接続パーツを準備。デジタルカメラアダプターTSN-DA10を使用すればアダプターリングなどとの組合せで、デジスコに適したコンパクトデジタルカメラを接続することができる。また、コンバーターリングTSN-VA2-CRを活用すると、TSN-VA1/VA2などが取り付けできるのでビデスコを楽しむことができる。
また、DIGISCO.COM社製のTurboAdapterP2を取り付ければ、DIGISCO.COM社が対応するコンパクトデジタルカメラユニットと互換となり、カメラの選択肢が広がる。
TurboAdapterP2を使えば多くのカメラと互換性が生まれる
 
高速連写で今話題のIXY1000もつなぐことができる

 
製品の位置付け
  TSN-884/774/664/604/504と現行では5機種となった。デジスコに関して言えばキッパリ774/664の2機種がお薦め。
884はさすがに被写界深度が浅いので、圧縮効果の高さによるメリハリと抜けの良い色合いなど大口径フローライトのメリットを好む方には撮影成功率が低めになることを覚悟の上で選ぶことは良いと思う。ちなみに私はTSN-884を選び常用機種としている。
774を使って30〜60倍程度で撮影した画質が一番デジスコらしい鮮明で迫力ある画像のように思う。被写界深度も884の2倍程度はあるように感じる。77mm口径のXDレンズは明るく、鮮明な画像をコンパクトデジタルカメラに導いてくれる。撮影成功率は名器と誉れの高いTSN-664と同等と言っても過言ではない。
664に比べると被写界深度は浅いのであるが、明るさによるシャッター速度の向上が効果的であるようだ。アイピースの重量差まで配慮すると664に比べ400g程度重くなる。三脚・雲台もワンランク差がつくとすればシステム全体では1〜2kgの差が出ることも考えられるので機動性や体力的に軽量化を目指す方には664がお薦めとなる。
 
価格
  ライバルはなんと言ってもニコンED82。実売価格でみると接眼レンズまで含めると1割ほど高くなる。しかし、82mm口径に比べ比較的写しやすい77mm口径。ニコンのアイピースまで転用可能となるとダウンサイズ組もいるかも知れない。
上位機種のTSN-884は海外機種と肩を並べる価格帯に入っているのでTSN-774が格安に感じる。いわゆるコストパーパフォーマンスはかなり高いスコープであると言える。

 
テスター1、石丸喜晴(たーぼ♪)
私の作風にはTSN-884が合っているので普段使っているのだが、やはり、撮影成功率はかなり低い(4〜5枚/1000枚)と言える。しかし、評価のためにTSN-774を使うと一気に成功率が高まり(20〜30枚/1000枚)驚かされる。ピントも合いやすくAFも心なしか迷わずに合焦してくれるように感じる。さすがにフローライトクリスタル88mm口径のTSN-884の前後ボケやシャープさには敵わないが成功率が高いのでシーンの良い画像を捉えやすくなることのメリットのほうが大きく感じる。
但し、実質30倍がベースであることでデジスコらしい迫力画像には若干倍率不足を感じるが光学性能の良いデジタルカメラが出ればテレ端まで使えるので特に問題は無いように思う。
最短合焦距離はデジスコセットにした際、ニコンより1m弱程度長くなる。被写体が近寄りすぎた時にちょっと苦しくなることがあった。
TSN-774は解像感、色合い、適度な被写界深度は入門者〜ベテランまで誰でも楽しめるデジスコ向きのスコープであることは間違いない。
テスター2、大島志のぶ(pou)
 
 
作例
 

ミソサザイ (長野県)


作例撮影機材
スコープ KOWA TSN-774
アイピース KOWA TSE-TE17W
アダプター TurboAdapterP2
BR-IXYsu
カメラ キヤノンIXYdigital1000
カワセミ (東京都)

作例撮影機材
スコープ KOWA TSN-774
アイピース KOWA TSE-TE17W
アダプター TSN-DA10
BR-S80(改造版)
カメラ キヤノンパワーショットS80

 
TSN-774はある意味歴史に残るスコープになると思う。なにより、デジスコで使う上では80mmクラスの迫力で、写し易い被写界深度を持ち、撮影においても近〜遠まで歪みを気にすることなく写せること、そして驚くほど高い解像感。ニコンED78と同等以上と言えそうである。
ある程度、しっかりしたスコープでデジスコを始めたい初心者の方、60mmクラスからのアップグレードを希望のユーザーにとっては選択肢のトップに来るスコープであると思う。


報告者 株式会社デジスコドットコム 石丸喜晴
たーぼ♪

■ 興和株式会社 http://www.kowa-prominar.ne.jp/
■ 株式会社デジスコドットコム http://www.turboadapter.com/