2007年3月30日


  希望小売価格(税込)¥262,500
【本体価格 ¥250,000】
対物レンズ有効径 88mm
全長:329mm   重量:1520g



 
2006年12月1日、興和株式会社から新型スポッティングスコープTSN-884と命名された新製品が兄弟機TSN-774と同時に発売された。
興和株式会社はプロミナーシリーズとして高性能スコープのラインナップも業界でNo.1の充実度である。今回レポートするのはフラッグシップのTSN-884である。発売開始からいきなり好評のTSN-774、デジスコの定番機種と誉れも高いTSN-664、TSN-604、TSN-504とラインナップされている。下位2種は別として88mm、77mm、66mmと並び数字にこだわりがあるようである。
この中でフラッグシップとなるTSN-884の最大の特徴はニュースリリースにもあるように、「バードウォッチャーを中心とした自然観察や、デジタルカメラ、ビデオカメラとの組み合わせによる超望遠撮影(デジスコ、ビデスコ)の用途」とあるように撮像用途に重きをおいていることがわかる。それでは実際にどの程度デジスコに配慮された製品なのかを焦点としてレポートしたい。

 
スコープ本体
 
対物レンズは大口径88mmのフローライトクリスタルレンズ採用
 
TSN-884(及びTSN-883)に採用された対物レンズは88mmフローライトクリスタル(結晶性蛍石)レンズと呼称し、一般的なフローライト硝材と差別化した表現をしていることが興味深い。大きな結晶素材を作ることも難しいが、柔らかく熱変化しやすいフローライトを設計通り研磨し、適切なコーティングをすることは究めて高度な技術が必要で、高額なイニシャルコストがかかっていると聞いている。2群3枚の対物レンズ群はデジスコユーザーが知る以上に贅沢な仕様といえるだろう。その結果、色にじみや歪曲収差は極めて小さく、テーブルテスト結果がそのまま作例につながっていることに驚かされる。
フローライトクリスタル88mm大口径レンズ採用
 
微動と粗動が組合されたデュアルフォーカス
 
使いやすいデュアルフォーカスノブの設計もデジスコ重視の設計
2周強でロックtoロックとなる大きな直径の粗動ノブと軽く滑らかに動く微動ノブを装備し、観察・撮影とも使いやすいデュアルフォーカスシステムが構成されている。ノブの配置も自然に手が置ける場所に位置していて使いやすい。
 
堅牢・軽量なマグネシウムボディー
 
軽量樹脂筐体にこだわっていた興和が一転して頑強なマグネシウムムボディーに変更された。チクソモールディングという最新の射出成形法による薄肉で高剛性ボディは樹脂に比べ熱による寸法変化も少なく光学機器筐体には現行では最良の選択と思う。頑強な金属ボディーにはネイチャー志向の質感の良いグリーン塗装が施され、ボディーデザイン・性能とも高く評価できる。
チクソモールディングによるマグネシュームボディーは軽量・高剛性
 
機動性に優れたコンパクト設計
 
確かにTSN-884は口径のわりに小さく見える。寸法的な面だけではなく大きく見せない巧みな意匠設計も功を奏しているのであろう。実際大きさだけならTSN-774と大きな違いは無い。このコンパクトなボディーに88mmの超ド級の迫力あるシステムが納まっているのであるから驚きである。
コンパクトに設計された意匠
ニコンED82より小さく見える
 
アイピースロック機構
 
バヨネット機構によるアイピース固定はスピーディーで好ましい反面、デジスコ用カメラユニットなどを取り付けると光軸のズレにつながることが多く、そんなに頻繁にアイピースを交換することのないデジスコにおいては特にバヨネットである必要も感じない。しかし、今回のバヨネットは大きさも、本体付属の板バネもダイナミックでしっかりカメラユニットなどを含めた重量にもしっかり対応できそうである。また、アイピースロック機構はデジスコにおいては必須ともいえる機構なので標準装備されたことで安心感が高まった。
ズーム接眼を使うためにもロック機構は必須
 
こだわりある三脚マウント
 
大きなカメラネジでしっかり固定できる設計は回転防止に効果的
頑強な回転式台座が標準装備されている。45度ごとにクリックする場所はあるが、基本的には自由な角度で固定できる。幅広の台座には3/8インチの三脚ネジと回転防止の穴が2つ準備されている。多くのスコープは1/4インチのネジが装備されているのであるが「思いっきり締め上げてください」と自信をもってユーザーにアピールしているのであろう。実際に、3/8インチネジであれば渾身の力で締めてスコープの回転ズレを防止できる気がする。もちろん、3/8から1/4インチに変換するスリーブネジも装備されている。
 
接眼レンズ
 
高性能アイピースの新規ラインアップ
 
今回は新型アイピースとして3種類ラインナップされた。20〜60倍のズームレンズ(TE-10Z)、30倍ワイド単焦点レンズ(TE-17W)、25倍ロングアイレリーフアイピース(TE-20H)。デジスコにおいてはTE-17Wが中心的な存在になると思われる。但し、TE-10Zがとても面白くデジスコで使えるので30倍以上を求めるユーザーにはTE-10Zが気になってくると思う。ハイアイのTE-20Hは射撃などの用途を中心としたアイピースと思われるが、アダプターを共通で使えるので長いアイレリーフを必要とするカメラへの対応幅が広がる可能性はあるといえる。
デジタルカメラとの接続にはTSN-DA10と各種アダプターリングで接続できる。
30倍単焦点、20〜60倍ズーム、ロングアイレリーフの3種
 
アイピースの防水加工による安心設計
 
このアイピース群はかなり高級なものと位置付けて間違い無さそうである。アイピースの防水加工を謳っているが、レンズの大きさや面倒なレンズ1枚1枚のコバ塗りなど丁寧に作っていることがうかがえる。値段は高いが、その価値は充分あるように思う。
今までのアイピースに無い品質本位のこだわりがある
 
アイピースコンバーターのラインナップ
 
TSN600,800シリーズのアイピースも使える変換リングも揃っている
今回の新型アイピースを従来のTSN-664やTSN-824Mに取り付けることはできないが、旧来〜現行までのアイピースをTSN-774/884に取り付けるためのアイピースコンバータが2種用意されている(TSN-EC2/EC3)。また、ビデオアダプター用のコンバーターリングTSN-VA2-CRを使うとDIGISCO.COM社のTurboAdapterP1が取り付けできるため、光軸を極めたがっちりした接続も可能である。さらに、同社のNKAという変換アダプターを使えばDIGISCO.COM社製接眼レンズアダプターやニコン製アイピースも接続可能なのでニコンからの引越し組も出てくる可能性がある。
TurboAdapterP1もジャストフィット
 
NKAを使えばTurboAdapter接眼やニコン接眼まで使える
 
業界初のズーム方式一眼レフ用アタッチメント
 
一眼レフ用のフォトアタッチメントが2種用意されている。なんと言っても業界初の680mm〜1000mm(F8.8〜13.0)のズームができるTSN-PZが特徴的である。950mm(F12.3)の単焦点TSN-PA2Dも準備されている。
ズーム機能がついた一眼レフ用アタッチメント
 
デジタルカメラアダプターやビデオアダプターを準備
 
ビデスコも思いのまま楽しめる
デジスコやビデスコに必要な接続パーツを準備。デジタルカメラアダプターTSN-DA10を使用すればアダプターリングなどとの組合せで、デジスコに適したコンパクトデジタルカメラを接続することができる。また、コンバーターリングTSN-VA2-CRを活用すると、TSN-VA1/VA2などが取り付けできるのでビデスコを楽しむことができる。
また、DIGISCO.COM社製のTurboAdapterP2を取り付ければ、DIGISCO.COM社が対応するコンパクトデジタルカメラユニットと互換となり、カメラの選択肢が広がる。
TurboAdapterP2を使えば多くのカメラと互換性が生まれる
 
高速連写で今話題のIXY1000もつなぐことができる

 
製品の位置付け
 
TSN-884/774/664/604/504と現行では5機種となった。一般的なデジスコファンに対して言えばキッパリ774/664の2機種がお薦め。
884はさすがに被写界深度が浅いので、圧縮効果の高さによるメリハリと抜けの良い色合いなど大口径フローライトのメリットを好む方には撮影成功率が低めになることを覚悟の上で選ぶことは良いと思う。ちなみに私はTSN-884を選び常用機種としている。


884本体重量は1.5kg、三脚・雲台など大きめの物が必要なので一般的なデジスコシステムにすると5.5kg〜6.5kg程度になる。774は200g程度の違いなので大差は無いのですが、664・604クラス(システムで3〜4kg)に比べると2kg以上の重量増になる。自分の体力や撮影スタイルに合わせ選ぶことが必要である。
被写界深度は驚くほど浅い。
実際の野鳥撮影でも野鳥の目にピントが合った状態で尾羽は完全にボケてしまう
 
価格
  TSN-884のライバルはツァイス、スワロフスキー、ライカの大口径機種となる。実売価格でみると接眼レンズまで含めると多少リーズナブルとはいえ、欧州三社と真っ向勝負と言える。ここで言う「ライバル」とは価格帯でのテーブルであり、デジスコ撮影性能まで加えると評価が個人個人で変わってくると思う。私のように圧縮効果の高い、被写界深度の浅い作風を求めるユーザーには色のり・鮮明さなどを含めて「安価」にすら感じる逸材であるが、初心者でピント合わせなど操作面に熟練が不足であったり、乱視や老眼など眼に不安のある方には難しいスコープであるようにも思う。高価であることに加え、ある程度のスキルも求められるので上級者向けのスコープであると言える。
 
 
色合い
 
基本としてカメラの持っている色合いをしっかり再現できるスコープがデジスコにも適していると考えると、TSN-884、TSN-774は秀逸と言える。もちろんスワロフスキーSTS80HDも同様に思う。残念ながらニコンED82は黄色く色付いていることがわかる。個体差とも思い、2個体を比較したが同様な傾向なので個性として受け止めた方が良さそうである。ニコンED82を使っているユーザーの多くは屋外での撮影の場合、ホワイトバランスを「蛍光灯」にして撮影して黄色を補正しているので実際の撮影では特に大きな問題ではないが、今回の比較撮影では気になる結果となった。
TSN-884の透明感のある見え方は突出している感じがするが、驚くべきはTSN-774の色である。この価格でこの発色なら充分な満足を得られる。
(全種、カメラ設定、倍率などをほぼ同一とし、カメラホワイトバランスは光源にあわせて「蛍光灯」とした)
TSN-774
]TSN-884
ニコンED82
スワロフスキーSTS80HD
IXYdigital1000単体 蛍光灯
 
 
歪み
 
テストチャートでの比較なので、実際の撮影にすべて反映されるわけではないが、今まで優等生と言われているニコンED82やスワロフスキーSTS80HDとの比較をしても周辺までしっかり歪まずに色収差も抑えられている。中央はもちろん、周辺部までしっかり解像しているテストチャートを見ると気持ちが良い。特に、TSN-884は88mmと大口径でありながら歪曲させずにしっかり解像させていることに驚かされた。もちろん、フローライトクリスタルの効用である色収差の無さについては画像周辺までしっかり具現化されている。
TSN-774
]TSN-884
ニコンED82
スワロフスキーSTS80HD
IXYdigital1000単体 蛍光灯
 
 
被写界深度
 
同一倍率にして被写界深度を実写してみた。60mm、66mm、77mm、88mm各口径の被写界深度はこんなに差がある。例えばメジロのような小さな小鳥であればTSN-604(60mm)であれば目にピントを合わせれば概ね全身にピントが合っているように見えるはずである。反面、ピントの合っている部分が強調されないので迫力という点では不足に感じるかも知れない。
TSN-664(66mm)の深度は深目であるが、前後は適度にボケていて画面に野鳥の全身を入れて写した場合にちょうど良い感じとなる。
TSN-774(77mm)はいわゆる「デジスコらしい」迫力ある表現ができるスコープで、成功率も高いと言えるので初級者〜エキスパートまであらゆる局面で楽しめる表現力を備えていると思う。
TSN-884はまさにピンポイントの被写界深度なので、腕に自慢のエキスパートや、ジャスピン狙いで成功率を落としてでもド迫力の圧縮効果を得たい人向けであることがわかると思う。
各口径の被写界深度はこんなに差がある

 
「フローライトクリスタルレンズのスコープ」という印象は前作のTSN-824Mで苦労したイメージが強く正直なところあまり乗り気がしなかった。というのは、824の場合、見えについてはまったく申し分ないのであるが、デジスコ撮影をするとなぜか見えている通りに被写体を撮影できなかったのである。撮影中の手ごたえはしっかりあるのだが、実際にパソコン画面に映し出してみると解像していなかったりピントが曖昧だったりすることが多く、また、すべてが同じような傾向であれば納得もできるのであるが、飛びぬけて素晴らしい画像も混じっていたりする・・なんとも不可解な現象に悩まされたトラウマをもっていた。
ところが、このレポートを作成するに当たりテスト撮影を繰り返してみると、とても良い成果を出すケースが多く、いつの間にかすっかり私の常用スコープになっていた。撮影時に手ごたえのある場合はちゃんと反映され、また、撮影時に「あ〜前ピンだったなぁ〜」「ブレちゃったなぁ〜」と思ったものはしっかりその通りに写っているというリニアレスポンスのあるスコープという印象を受けた。
正直、ドアップ撮影ではピントにかなり苦労することになります。浅い被写界深度は野鳥の挙動によって目の位置が数ミリずれることで「ジャスピン」か「ピンアマ」かが決まってしまう。タイミング良く、ジンバル雲台が開発されたことや、高速連写のカメラが発売されたことも相まって中央でAF合焦させ、レリーズ半押しのまま目の位置に微動ノブを操作してピントを目視で合わせ、ジンバル雲台のなめらかな動きで構図を決め、連写する。ピントなど条件が外れれば同様な操作を繰り返すといった撮影法になる。また、野鳥が落ち着き無く移動を繰り返す場合は、半押しのまま、粗動、微動のノブを左手人差し指と中指で目にピントが来るようにレリーズ半押しのままマニュアル合焦操作を行う。TSN-884は被写界深度が浅いという難しさはあるものの、反面「明るさ」がシャッター速度を早くするのでブレの防止にもつながっていて、多少スコープに触れたままの撮影などブレには無防備な撮影もやりやすくなっているとも言える。
とは言え、間違いなく難しい撮影機材であるので撮影成功率を求めるユーザーには向かないかも知れない。
しかし、色合い・解像感・圧縮効果・ボケの綺麗さなどが秀逸であるため、撮影成功率が下がってでも良い画像を撮影したいというユーザーには最適なスコープの一つであると言える。
テスター1、石丸喜晴(たーぼ♪)




テスター2、大島志のぶ(pou)
 
 
作例
 

作例撮影機材
スコープ KOWA TSN-884
アイピース KOWA TSE-TE17W
アダプター TurboAdapterP2
BR-IXYsu
カメラ キヤノンIXYdigital1000

作例撮影機材
スコープ KOWA TSN-884
アイピース KOWA TSE-TE17W
アダプター TurboAdapterP2
BR-IXYsu
カメラ キヤノンIXYdigital1000
   

作例撮影機材
スコープ KOWA TSN-884
アイピース KOWA TSE-TE17W
アダプター TSN-DA10
BR-S80(改造版)
カメラ キヤノンパワーショットS80

作例撮影機材
スコープ KOWA TSN-884
アイピース KOWA TSE-TE17W
アダプター TurboAdapterP2
BR-IXYsu
カメラ キヤノンIXYdigital1000

 
TSN-884とTSN-774の2機種がオフィスに届いた。スタッフ皆の期待が高いので、当然、評価も厳しくなる。まずはダメだし・・・っと思っていたけれど、「いいじゃぁ〜ん」とデザイン面でいきなり合格。TSN-664の唯一の欠点であった鏡筒角度の微妙なオフセットも改善され、すっきりとしたデザインにまとめられている。細部に見られるデジスコを意識した設計。遮光絞りやコバ塗りされたレンズ、手をかけた防水加工など梱包を解いた時から全員ノックアウト状態。興和鰍フ企画・設計担当者のモノづくりに対する情熱が伝わってくる。
早速、フィールドに持ち出し評価撮影を繰り返す。(TSN-774の写しやすさと成功率の高さは別レポートを参照いただきたい)TSN-884はスポッティングスコープにおいてはフローライトで一番大きな口径の対物レンズであることになり難しさが予測された。ところが「難しくて写せないんじゃないかなぁ〜」なんて思ったことさえ忘れてしまうほど見えた通りを写せる正直な表現力を持つスコープだなと関心させられてしまった。例えば逆光でコントラストの強い場合でも色収差がほとんど気にならないのでバシバシ写せる。撮影シチュエーションが広がることで撮影機会が増えた。大口径による明るさから得られるシャッター速度の向上という恩恵は総合的に撮影枚数を増やし、絶対数として成功画像が増えている。デジスコの場合、動く被写体相手の撮影で被写界深度の浅さは撮影を難しくする。しかし、実際の撮影ではジンバル雲台とIXYdigital1000のような高速連写カメラとの相乗効果で1日に最低でも500枚、多いときには2000枚の撮影ができている。色のり、鮮明さは間違いなくトップクラス。被写界深度の浅さは裏を返せば圧縮効果が大きいということであり、美しく表現される前後ボケを作品作りとして楽しむことができる。
正直、すっかりTSN-884にはまってしまった。デジスコ仲間でTSN-884を購入した人と話をしても皆同じ印象を持っているようだ。
結果的に良い作例が多数写せているということは・・・ひょっとして「写しやすい」スコープなのかも知れないと思いはじめている。


報告者 株式会社デジスコドットコム 石丸喜晴
たーぼ♪

■ 興和株式会社 http://www.kowa-prominar.ne.jp/
■ 株式会社デジスコドットコム http://www.turboadapter.com/